「ホスピスで働くのは憂鬱ではないですか?」とよく聞かれます。 ホスピスの仕事は悲しく、憂鬱なものではないかと思う皆さんの気持ちはわかります。それは、ホスピスは「死の場所」と考えられているからでしょう。
しかし、ホスピスは場所ではありません。 ホスピスとは、末期の患者さんやその家族に提供されるケアのことです。その目的は、患者さんが安らかに尊厳を持って最後の時を過ごせるよう、医療だけではなく、心のケアを提供することにあります。病気を治す事を英語で cure(キュア)といいますが、ホスピスの基本は、cureではなく、思いやること、すなわちcare(ケア)です。
ホスピスでは、死を医療の敗北とは考えません。死は誰もがいつかは経験する人生の過程です。そういった意味では、人の死を助けるのと赤ちゃんの出産を助けるのは、よく似てます。両方とも、人生に起こる自然な過程だからです。
私の友人で、救急病棟の医師をしてるアメリカ人がいます。ある日彼が、週に1度出席しなければいけないミーティングについて話してくれました。そのミーティングは「疾病率と死亡率」といい、その週に病院に運ばれてきた患者さんの病気や死に関して、チームで話し合うものです。患者さんが亡くなったケースは、また同じような事が繰り返されないように、慎重に分析されます。死が防げない場合があるとわかっていても、 救急病棟で働く人々にとっては、死は医療の敗北なのです。
救急病棟の医師としての仕事は、ホスピスの音楽療法士としての仕事以上に、死に焦点を当てた仕事だと、私と友人は同感しました。死は自然な現象で、避けられないものです。そして時には、患者さん本人にとっては、喜ばしいことでもある場合もあります。そういった認識をすると、ケアの焦点が死から生きることへと移行します。死を防ぐことではなく、患者さんが残りの人生をどうやって有意義に過ごす事ができるか、ということが重要になってきます。
ホスピスケアの焦点は生きることです。なぜなら、死にいたる過程は生きていることの一部だからです。何年か前、50代の末期がんの女性が、亡くなる数日前にこう言いました。
「私の人生は冒険だったわ。死は私にとって、また別の冒険。私は今、新たな冒険に臨む心の準備ができてるの」
人の人生の過程にこのようにして関わるということは、とても貴重で神秘的な経験です。ホスピスで働くということは、憂鬱ではありません。それどころか、生きることについて沢山のことを教えてくれた、かけがえのない道のりであったと思います。
YUKI says
はじめまして
兵庫県在住の音楽療法士です。
緩和ケアでの音楽療法をしたいと思っています。
死に近い人に接したい、残りわずかな貴重な時間をご一緒させて頂きたいと思っています。色々教えてください
宜しくお願い致します。
YUKI
Yumi says
メッセージありがとうございました。
兵庫県ではとても音楽療法が盛んだと聞きました。
緩和ケアでのお仕事、これからもっと増えていくのではないでしょうか。 そうなることを期待しています。
こちらこそ、宜しくお願い致します。
YUKI says
お返事ありがとうございます。
お返事を頂けるとは思っていなかったので、びっくり嬉です。
YUMIさんの文章を読んでいて共感出来るところがあって、実際に今、緩和ケアの音楽療法はしていませんが、やっぱりやりたい!と思いました。
これからも、読ませて頂きますので、色々教えて下さい。
宜しくお願いします。
由起
P.S:兵庫県は件で療法士を育成してるので他県よりは恵まれてます。