日本語版ウィキペディアの「歴史修正主義」問題
昨年に刊行された『戦争の歌がきこえる』(柏書房)は、私がアメリカのホスピスで音楽療法士として働いていた時に出会った、第二次世界大戦経験者について書いた本です。執筆のために第二次世界大戦について様々な資料を調べている時、日本語版ウィキペディア(Wikipedia)の奇妙な現象に気づきました。
歴史上の出来事をインターネットで検索をすると、必ず最初にヒットするのはウィキペディアのページです。しかし、日本語と英語で同じトピックを検索すると、ページの内容がかなり異なることに気づきます。特に、日本の戦争犯罪などセンシティブなトピックに関するページは、バイアス(偏見)やミスリーディング(誤解を招く)な情報で溢れています。
間違いやバイアスだらけのウィキペディア
「ウィキペディアには間違った情報が多いことは知ってる」という方もいると思います。でも、英語版ウィキペディアは一般的に信頼性が高いことは知っていますか? 英語版ウィキペディアの正確さについて調べたリサーチはいくつかあり、その結果は様々ですが(*1‐2)、日本語版ウィキペディアで起こっているような明らかな偏見は見つかりません。
また、教養のある大人が「ウィキペディアの情報を鵜呑みにしてはいけない」と知っていたとしても、子どもたちはどうでしょう? 歴史に関する知識が浅い子どもがウィキペディアのページを読み、その内容を事実として信じてしまう可能性は高いと思います。
日本語版ウィキペディアの影響力
実際、日本語版ウィキペディアは非常に人気があるサイトです。現在、ウィキペディアは300以上の言語で開設されていますが、日本語版は英語版の次に最も利用されている言語版です。 2020年12月のデータによれば、日本語版ウィキペディアは1か月間で12億回のページビューがありました(*3)。これほど多くの人が利用しているサイトですから、その影響力は計り知れません。
私はこの問題について、詳しく調べてみることにしました。ウィキペディアの仕組みや日本語版の特徴などをリサーチする中で、いくつか興味深い発見がありました。
2021年2月3日、その調査結果を Interaction 21 という学会で発表しました。世界各国のUXデザイナーが参加する学会です。UXデザイナーとは、ユーザー・センタード(
日本語版ウィキペディアで何が起きている?
本題に入る前に、いくつか言葉の説明をしたいと思います。
ディスインフォメーションとは?
- インフォメーション(information):情報。
- ミスインフォメーション(misinformation):間違った情報。虚偽。
- ディスインフォメーション(disinformation):故意に流す虚偽の情報。ミスインフォメーションを「意図的に」広めること。より一般的には「偏った情報」や「操作された情報」を指して使用される (*4)。
近年、テクノロジープラットフォーム(インターネットプラットフォーム)で広がる「ディスインフォメーション」が世界中で問題になっています。欧米では特に Facebook, Twitter, YouTube などのソーシャルメディアを通じてディスインフォメーションが山火事のように広がり、民主主義を脅かしています。ウィキペディアはソーシャルメディアではありませんが、テクノロジープラットフォームのひとつです。
日本語版ウィキペディアでは、日本の戦争犯罪などセンシティブなテーマを扱うページがディスインフォメーションで溢れています。日本人にとって不都合な情報や居心地の悪い内容は省略されていたり、故意に曖昧になっています。このような行為は”ホワイトウォッシュ(whitewash)”と呼ばれます。物事をごまかし、罪や事実を隠すという意味の動詞です。
日本語版ウィキペディアにおけるディスインフォメーションやホワイトウォッシングの例をいくつか紹介します。
※ウィキペディアの性質上、ページの内容は変わる可能性があります。下記に挙げる例は2021年1月時点の検索項目です。
香港の戦い
1941年12月8日、真珠湾攻撃と同日に起こった「香港の戦い(英語:Battle of Hong Kong)」。聞いたことがない人も多いかもしれません。私も学校で習った記憶はありませんが、『戦争の歌がきこえる』で紹介した中国生まれの患者さんと出会ったことで、この戦いを知りました。
香港の戦いでは、日本軍による虐殺(英語:massacre)やレイプが起こったことが広く報告されています。しかし、日本語版ウィキペディアのページにはそのような記述は一切ありません。英語版ページには “Massacre(虐殺)” という欄があり、10件以上の事件に言及しています。
- 日本語版Wikipedia:香港の戦い »
- 英語版Wikipedia:Battle of Hong Kong »
慰安婦
日本と韓国のあいだで最も物議を醸している歴史的トピックのひとつが「慰安婦(英語:comfort women)」です。日本語版ウィキペディアのページの冒頭では、慰安婦の説明に「売春」という言葉が使われています。ページ全体を通して、「売春」「レイプ」「慰安婦」という言葉を意味を区別せずに使用することによって、問題の趣旨を曖昧にしています。
近年、安倍前首相を含むナショナリストたちは慰安婦の「強制性を示す証拠はない」と主張しています(*5)。ウィキペディアの内容はこの主張と一致すると言えます。一方、英語版では慰安婦は “sex slave(性奴隷)”と称されています。
- 日本語版Wikipedia:日本の慰安婦 »
- 英語版Wikipedia:Comfort Women »
南京大虐殺・南京事件
歴史的トピックで議論を引き起こすもうひとつのテーマが「南京大虐殺(英語:Nanjin Massacre)」です。日本版ウィキペディアのページで最初に気づくことは、名称が「南京事件」となっており、「南京大虐殺」ではないことです。ちなみに英語で “Nanjin Incident(南京事件)” と書いた場合、1927年に起きた別の出来事を指します。
また、このページの奇妙な点は、事件に関連する写真がないことです。唯一掲載されているのは「中山門」の写真と「南京城内で避難民にまぎれて逃亡を企てた中国軍正規兵を調べる憲兵」と題した写真のみで、虐殺とは直接関係ありません。
さらに、ウィキペディアの歴的的な出来事に関するページには、右側に主要部を掲載した枠があり、そこに写真、犠牲者数、日付、場所、などのハイライトが掲載されています。でもこのページにはその枠がありません。写真だけではなく、犠牲者数も明記されていません。
一方、英語版ウィキペディアでは、犠牲者や虐殺の現場を含む沢山の写真が掲載されています。またページの右側の枠には写真と共に推定の犠牲者数が明記されています。
Nanjin Massacre(左)・南京事件(右)
- 日本語版Wikipedia:南京事件 »
- 英語版Wikipedia:Nanjing Massacre »
731部隊
731部隊のページでは、旧満州で行われた人体実験が「説」として書かれています。旧版には「人体実験」のセクションがあり、加害者と被害者の証言が記載されていました。しかし、2020年に新版になると項目が削除され、人体実験を「説」とする小さなサブセクションに置き換えられました。
アメリカの戦争犯罪 VS 日本の戦争犯罪
日本語版ウィキペディアが「日本の戦争犯罪」をホワイトウォッシングしているのと同じく、英語版ウィキペディアでも「アメリカの戦争犯罪」について同じことをしているのではないか? そう考える人もいるかもしれません。
しかし、英語版ウィキペディアの「United States War Crime(米国の戦争犯罪)」と日本語版ウィキペディアの「日本の戦争犯罪」のページを比較すると、その違いは明らかです。
United States War Crimeのページでは犯罪の詳細が詳しく記されており、写真もあります。日本の戦争犯罪のページでは犯罪についての説明はなく、箇条書きされているのみで写真もありません。
United States War Crime(左)・日本の戦争犯罪(右)
- 日本語版Wikipedia::日本の戦争犯罪 »
- 英語版Wikipedia:United States War Crime »
プロパガンダは「疑い」の種を植える
上記に挙げた例はごく一部です。日本語版ウィキペディア内で歴史のテーマを検索すると、ディスインフォメーションが次々と見つかります。
もし、歴史修正主義者(英語:historical revisionists)が日本語版ウィキペディアのページを見た場合、自分が信じていることを正当化するツールとなるでしょう。でも、ウィキペディアを訪問する大多数の人は歴史修正主義者ではないと思います。戦時中に日本がアジア諸国で行ったことについて詳しく知らなかったとしても、ある程度の知識はあるでしょう。だとすれば、ウィキペディアのページを読んですぐに内容を信じてしまう、ということはないかもしれません。ただ、自分の知識を疑ってしまう可能性はあります。
「もしかしたら、これまで自分が持っていた歴史的な知識は間違っていたのかもしれない」
「もしかすると、学校で学んだことは事実ではなかったのかもしれない」
このような「疑い」の種を植えることが、プロパガンダの狙いです。ウィキペディアを読んだ人がその内容を全て信じなくても、その人が自分の知識に疑いを持つだけで、歴史修正主義者の目的は達成したと言えます。だからこそ、日本語版ウィキペディアで起こっていることは危険であり、真剣に受け止める必要があるのです。
日本語版ウィキペディアからの返答
ウィキペディアを運営しているのは、アメリカの非営利団体であるウィキメディア財団(英語:Wikimedia Foundation)です。私はこの財団に連絡し、日本語版ウィキペディアで起きている問題を(英語で)報告しました。でも財団からの返答はなく、代わりに私のメールは日本語版ウィキペディアのコミュニティに転送されたようです。そして、日本語でメールが届きました。そこにはこう書かれていました。
ウィキペディアの母体であるウィキメディア財団は、サーバ運営や
寄付募集を行っていますが、個々の言語版の記事内容には容喙しま せん。日本語版の内容は日本語版の編集者コミュニティの自治にゆだねら れています。ウィキペディアは基本方針を守る限りどなたでも自由に編集していただける百科事典です。ガ イドブックをご覧になって、項目のノートページ にコメントをお書きください。
要するに、コンテンツに問題があるならば、自分で編集すればよい、と。
誰もが自由に編集できる、というのは本当?
早速、問題のあるページを編集してみました。必要な文章を追加し、間違っている部分を削除しました。でも、私が行ったすべての編集は、数時間後にすべて元に戻されてしまいました。まるで編集がなかったかのように、すべて消されてしまったのです。
そもそも「南京事件(南京大虐殺)」のページは、編集ができないようになっていました。このページは管理者(英語:administrator)が「保護」の状態にしているため、編集できるユーザーは制限されています。
ウィキペディアの「管理者」とは誰?
ウィキペディアの管理者(英語:administrator)は、ユーザーのブロック、ページの削除、ページの保護、制限なしでページの名前を変更、保護されたページの編集、および編集の自動復元などを行う権限を持っています。
日本版ウィキペディアは、ユーザーに対する管理者数が最も少ない言語版として知られています(*6)。Wikidata によると、英語版ウィキペディアには144,828人のアクティブユーザー(編集者・利用者)と1,109人の管理者(ユーザーベースの0.77%)がいますが、日本語版は15,774人のアクティブユーザーと41人の管理者(0.26%)しかいません(*7)。つまり、日本語版はごく少数の人々がプラットフォームをコントロールしているのです。
ウィキペディアは「誰もが自由に編集できる」という考えは、ミスリーディングです。厳密には正しいと言えますが、実際はそうではありません。一部の管理者が権限を持っており、編集したところでその編集が反映されるとは限らず、使いこなすにはウィキペディアに関するかなりの知識が必要です。
なぜ、日本語版ウィキペディアで「歴史修正主義」が広がるのか?
では、なぜ日本語版ウィキペディアでは歴史修正主義が広がっているのでしょうか? 英語版では同じような問題が起きない理由は何でしょうか? その理由には大きく分けてふたつあります。
言語の特徴
英語は世界67か国で公用語として採用されています。また、英語を話す人は世界に約15億人いると言われています。英語は様々な国籍、人種、文化、バックグラウンド(ある個人の性格や思想を形成する基盤となった境遇や環境など)を持つ人々によって話されている言語です。対照的に、日本語は主に日本で話されている言語です。
日本語版ウィキペディアのユーザー(編集者)や管理者のほとんどが日本人ですから、英語版ウィキペディアに見られるような国籍やバックグラウンドの多様性はありません。そのため、日本中心の偏った内容ができやすいのでしょう。
他の言語版でも似たような傾向が見られます。例えば、クロアチア語版ウィキペディアは、ファシズムや歴史修正主義を促進していることが報告されています。興味深いことに、クロアチア語版ウィキペディアも第二次世界大戦中の戦争犯罪を「ホワイトウォッシュ」していることが指摘されており (*8)、日本語版ウィキペディアと同様の問題が起きていることがわかります。
日本語版やクロアチア語版などのウィキペディアは、英語版と比べてはるかに孤立しているため、特定のトピックにおいてバイアスが掛かる可能性が高いのです。
啓蒙主義の価値観
ウィキペディアを含む、Facebook, Twitter, YouTube などのテクノロジープラットフォームは、西洋の価値観に基づいて作られたものです。もっと具体的に言うと、啓蒙主義(英語:enlightenment)の価値観が基盤となっています。ウィキペディアの創設者であるアメリカ人のジミー・ウェールズもウィキペディアを「啓蒙プロジェクト」と呼んでいます。
17世紀から18世紀のヨーロッパで広まった啓蒙主義の価値観の中で、重要なポイントをいくつか挙げます。
- 言論の自由
- 理性(英語:reason)を使用して真実(英語:truth)にたどり着く
- 公共圏(英語:public sphere)において社会問題を自由に議論する
公共圏とは?
「公共圏」は聞きなれない観念かもしれませんが、フランスの「サロン」がその例です。サロンとは文学者、芸術家、政治家などの社交的な集まりです。このような場で「社会問題を自由に議論し合う」ということをヨーロッパ人は何百年も行ってきました。アメリカ人は子どもの頃から自分の意見を持ち、それを表現することの大切さを教えられ、学校ではディベート(討論)の練習をすることもあります。
このような文化で育った人たちにとって、ウィキペディアは公共圏であり、その目的は様々な意見を出し合い、活発に議論することによってトゥルース(真実・事実)にたどり着くことにあります。
しかし、このような価値観が世界中に浸透しているわけではありません。日本には「公の場で社会問題を自由に議論する」伝統はありませんし、ツイッターなどで「匿名」で意見を言うことはあっても、実名でオープンに議論し合う機会はとても少ないと思います。
日本語版ウィキペディアには匿名・未登録のユーザーが多い
このような日本社会の特徴が日本版ウィキペディアにも反映されています。例えば、2007年の調査では日本版ウィキペディアの編集者の40%以上が未登録で匿名のユーザーとなっており、主要10言語のウィキペディアのうちで最も高いことが報告されました (*9)。日本語版ウィキペディアは「公共圏」ではなく、むしろ「匿名掲示板」のようになっていることがわかります。
匿名・未登録のユーザーによる編集
Source: Wikipedia
編集合戦とは?
ウィキペディアではコンテンツに同意しないユーザーがお互いの編集を書き換える、という事態が起こる場合があります。これを編集合戦(英語:edit war)と呼びます。
編集合戦はどの言語版でも起こりますが、日本語版ウィキペディアではかなりひんしゅくを買うようです。数回の編集が起こっただけで「編集合戦」と見なされ、管理者がページを「保護」する場合もあるようです。実際、日本語版ウィキペディアは他の言語版に比べて、保護されているページ数が多いことで知られています (*6)。
本来ウィキペディアは「理性を使用してトゥルース(真実・事実)にたどり着く」という価値観に基づき、様々な意見を議論し合うことによってコンテンツを作ることを目標としていますが、日本語版ウィキペディアでは必ずしもそうなっていないのです。
どうすれば、ウィキペディアを変えることができる?
ウィキメディア財団がこの問題を解決しようと思えば、様々な対処法があると思います。
- 登録ユーザーのみが編集できるようにする
- 管理者のトレーニングを含む監視(英語:oversight)を提供する
- 言語間のコラボレーションを増やす
登録ユーザーのみが編集できるようにすることで問題は完全に解決しなくても、ディスインフォメーションを投稿するユーザーを減らすことはできるかもしれません。ウィキペディアに限らず、テクノロジープラットフォームに監視は必要不可欠です。ウィキメディア財団がこれを行っていない理由は、下記の「セクション230とは?」をご覧ください。
AIを使用した、言語間でのコラボレーション
ウィキメディアは300以上の言語で開設されていますが、言語間のコラボレーションはほとんどありません。デザインを変更することで、言語間で内容が異なるページを読者に知らせることができます。
AI(人口知能)のテクノロジーを使って同じテーマを扱った異なる言語版を比較し、内容がどれだけ異なるかを調べます。難しそうに聞こえますが、実際にはテクノロジーを使って比較的簡単に行うことができます。言語間で内容が大きく異なる場合、ページに通知を追加して読者に知らせるのです。そうすることで、読者はページにミスインフォメーションやディスインフォメーションが含まれているかもしれない、とわかります。
セクション230とは?
これまで挙げた解決策を実行するためには、ウィキメディア財団が問題を認めて行動する必要があります。でも、財団はコンテンツには全く関与しない、というスタンスを取っています。日本語版ウィキペディアから私に送られてきたメールにも「ウィキメディア財団はサーバ運営や
1996年にアメリカでは「セクション230(英語:Section 230 of the Communications Decency Act ) 」が成立しました。ユーザーがサイトに投稿した内容から、テクノロジープラットフォームを保護する法律です。ウィキペディアを含むテクノロジープラットフォームは、この法律に守られています。ユーザーが投稿したコンテンツに関して訴えられる心配はなく、責任を負いません。
しかし、セクション230はこれらのプラットフォームが発明される前に成立した法律です。今日、テクノロジープラットフォームでは数々のディスインフォメーションが広がり、民主主義を脅かしています。また、これらのプラットフォームを通じて個人が殺害を強迫されたり、名誉毀損を受けたりすることも大きな問題となっています。そのため、この法律は廃止されるべきだという動きが高まっており、近い将来そうなる可能性があります(*10)。バイデン大統領もこの法律は無効にすべきだと言っています。
もしそうなった場合、FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアは大きく変わるかもしれませんが、ウィキペディアにどのような影響があるかはわかりません。ウィキペディアは英語圏では高く評価されており、ソーシャルメディアに比べてむしろ「良い例」と考えられているためです。
ウィキメディアの責任と義務
今回私がインターナショナルな学会でこの問題を発表しようと思った理由は、日本語版ウィキペディアで起きている問題を海外の人にも知ってもらう必要があると思ったからです。テクノロジープラットフォームで起きている事は、最終的にはそのプラットフォームを作り、運営している会社や団体の責任であるはずです。ウィキペディアの場合も同じく、日本語版ウィキペディアで起きている問題の責任は、ウィキメディア財団にあります。まずは私たちがそのことを認識し、財団に改善を要求する必要があるでしょう。
ウィキメディアのミッション(理念)
ウィキメディア財団は寄付金によって支えられています。サイトを運営するためには年間2500万ドルほどの費用がかかると言われおり、かなりの寄付金が必要です。寄付者は世界中にいますが、財団のサイトによれば、主な後援者はアメリカの財団や個人のようです(*11)。
先述したように、英語版ウィキペディアの評判は高く、ジミー・ウェルズの啓蒙思想に同意する人はとても多いです。寄付者の多くはその理念に賛同しているのでしょう。
ウィキメディア財団のサイトには下記のようなミッション・ステートメント(財団理念)が掲載されています。
The mission of the Wikimedia Foundation is to empower and engage people around the world to collect and develop educational content under a free license or in the public domain, and to disseminate it effectively and globally.
(訳)ウィキメディア財団のミッションは、世界中の人々に無償の使用許諾またはパブリックドメインで教育コンテンツを収集および開発するツールを与え、それを効果的かつグローバルに広めることです。
日本語版ウィキペディアのページの多くは「教育コンテンツ」とはとても言えません。もし、寄付者がその現状を知った場合、寄付を続けるでしょうか? ウィキメディア財団に改善を求めるかもしれません。日本語版ウィキペディアの問題を解決するためには、寄付者や利用者からのプレッシャーが必要です。
まとめと考査
日本語版ウィキペディアはディスインフォメーションで溢れています。特に日本の戦争犯罪などセンシティブな歴史に関するページでは、問題の趣旨を曖昧にしてごまかし、事実を隠す傾向があります。ウィキペディアが歴史修正主義を生み出したわけではありませんが、それを加速していることは明らかです。日本語版ウィキペディアは1か月間で10億以上のページビューがある人気サイトであるため、その影響力は計り知れません。
英語版ウィキペディアは正確性や信頼性において評価が高く、欧米では他のテクノロジープラットフォームと比べて「良い例」として語られることが多いです。しかし、言語や文化の違いから、日本語版は英語版と同じように機能していません。
ウィキペディアを改善するための解決策はいくつもありますが、ウィキメディア財団が責任を取らない限り、根本的な変化は起こらないでしょう。近頃、テクノロジープラットフォームが広げるディスインフォメーションが世界各国で大きな問題となっており、プラットフォームの責任や義務が問われています。この現状を変えるためには、法的な検討やパブリック・プレッシャー(世論の圧力)が必要です。ウィキペディアに関しては、寄付者や利用者が問題意識を高め、財団に改善を求めることが問題解決の第一歩です。
学会での反応
この内容を Interaction 21 という学会で発表しました。学会には世界各国のUXデザイナーが参加していました。アジア諸国からの参加者も多く、家族が日本の占領下に生まれたという人も数名いました。海外の人々からのコメントをいくつか紹介します。
歴史問題に関して
「私の祖父母は日本占領下の中国と香港で生き延びました。Battle of Hong Kong (香港の戦い)はMassacre of Hong Kong(香港の虐殺)と呼ばれています。でも、日本の教科書には含まれていないことを知っています」
「日本に旅行に行った時、第二次世界大戦の博物館に行きました。そこでは Nanjing Massacre (南京大虐殺)などの戦争犯罪に触れていなかったので、驚きました」
ウィキメディア財団の義務とは?
「先日、ニュース番組でウィキメディア財団のCEOが『ウィキペディアにはミスインフォメーションやディスインフォメーションがない』と断言していました。あくまでも英語版のことを言っているのでしょうが…」
「英語版しか見たことがないので、とても驚きました。ウィキメディア財団はこの問題に気づいているのでしょうか? だとすれば何とかするべきです」
「ウィキメディア財団は、問題の原動力を受動的に許可するか、社会の健全性を積極的に形成するかを決断する必要があると思います」
Update
ウィキメディアのノートとは?
♦ ウィキペディアの各ページには左上に「ノート」があります。そこに、これまで数多くのユーザー(編集者)が歴史修正主義の問題を指摘してきた記録を見つけました。戦争犯罪に関するページを編集しようとすると、パワーユーザー(権力編集者)が「中立性」や「著作権」などのルールを引き合いに出して、編集を「除去」していることも明らかになりました。さらには、彼らの意見に反対したために、アカウントをブロックされたユーザーが数多くいる事も知りました。731部隊のページの旧版を復元しようとしたユーザーも「過剰引用」を理由にアカウントをブロックされました。
英語版ウィキメディアでも問題になっている日本人ウィキペディアン
♦ ウィキペディアに関する議論や批判で知られる “Wikipediocracy” というフォーラムでこの記事の英語版が紹介されました。世界各国のウィキペディアンが訪れるサイトです。このフォーラムを通じて、英語版ウィキペディアで日本の戦争犯罪をホワイトウォッシング(物事をごまかし、罪や事実を隠すこと)しようとしたり、アイヌ民族などのマイノリティに対する差別的な編集を試みている日本人のナショナリスト・ウィキペディアン(ネトウヨ・ウィキペディアン)がいることを知りました。彼らの試みは成功していませんが、英語版でも問題となっているようです。
米誌「Slate」に記事を掲載
♦ 2021年3月、米誌「Slate」に “Non-English Editions of Wikipedia Have a Misinformation Problem”という記事を書きました。その一部が「Gigazine」で紹介されました。
日本語版Wikipediaの情報は少数のユーザーによってゆがめられているという指摘 »
ウィキメディア財団CEOが問題を認める
♦ Slate記事に対して、ウィキメディア財団のCEOであるKatherine Maher氏から返信がありました。下記の連続ツイートで、Maher氏は日本語版ウィキペディアの問題を認めています。
I really appreciate your article, and want to agree and affirm your concerns. There are some language versions of Wikipedia that struggle with diversity of perspective. This most frequently happens where there is a geographic/linguistic overlay reinforced by national border.
— Katherine Maher (@krmaher) March 20, 2021
ウィキメディア財団の回答
♦ その後、ウィキメディア財団の代表者と話をしました。日本語版ウィキペディアのコミュニティは、財団や他の言語版との交流がほとんどなく、孤立しているようです。そのため財団側もこのコミュニティで何が起こっているのか知るのが難しい、とのこと。財団には約500人のスタッフがいますが、日本語を話せる人はひとりもいないそうです。
また、財団には9名の理事がいて、財団の運営を監視する権威を持っています。ウィキペディアの創設者であるジミー・ウェールズもそのひとりですが、その中に東アジア人は一人もいません。財団のスタッフと理事のほとんど(もしくは全員)がアメリカ人とヨーロッパ人なのです。財団の焦点は英語版とヨーロッパ語版のウィキペディアであることは明らかです。財団が日本語版ウィキペディアの歴史修正主義を長年「知らなかった」理由がわかります。
♦ 財団側はこの問題をこれから調査すると言っています。ウィキペディアの内容やコミュニティの問題について財団に報告したい場合は、ca@wikimedia.org にご連絡ください(メールは日本語でOK)。
♦ 財団側は「日本語版Wikipediaで起こっている問題は、クロアチア語版で起こっている問題と全く同じ」と言っています。クロアチア語版における歴史修正主義の問題が報道されたのは2013年ですが、財団がこの問題を真剣に捉えて調査を始めたのは、昨年(2020年)のことだそうです。
クロアチア語版の極右編集者たち
♦ 2021年6月、ウィキメディア財団はクロアチア語版におけるディスインフォメーションについての調査結果(Croatian Wikipedia Disinformation Assessment)を報告し、長年、極右編集者達が記事を意図的に歪めてきたことを認めました。ウィキペディアのコミュニティが小さかったり、多様性がない場合、ウィキペディアはうまく機能しないことが、この調査結果から明らかになりました。
ウィキペディアに寄付する必要はない理由
♦ 今年もウィキペディアで「寄付のお願い」のバナーが出たようですが、 財団は2020年~2021年ですでに1億4200万ドル(約156億円)の寄付を集めています。ウィキメディア財団は非営利団体ですが、かなりの寄付金を集めていることが「The Daily Dot」の調べで明らかになりました。
ウィキメディア財団には日本語が話せる人がひとりもいないと先述しましたが、資金集めのためには45人のスタッフがいます。財団は、寄付金集めとPRにかなりの力を入れているようです。
米誌「Undark」に記事を掲載
♦ 2021年8月、米誌「Undark」に “Wikipedia Has a Language Problem. Here’s How To Fix It”という記事を書きました。この記事では、ウィキペディアの根本的な弱点を指摘し、300以上の言語版を作る代わりにひとつのグローバル・ウィキペディアを作ることを提案しました。
記事の執筆にあたり、ウィキメディア財団と再度連絡を取りました。財団では現在、日本語ネイティブスピーカーと協力して、日本語版ウィキペディアの問題を調査しているそうです。
中国語版における問題
♦ 2021年9月、ウィキメディア財団は中国語版の悪質編集者を7名追放し、12名の管理者を解任したと発表しました。これまでの報告から、クロアチア語版、日本語版、中国語版のウィキペディアには、悪質な編集者や管理者がいることがわかりました。ウィキペディアにはこのような問題を防ぐために多くのルールがありますが、実際には、熟練したネットワークがルールを回避するのは非常に簡単な事なのです。
日本語ネイティブのファシリテーター応募
♦ 2021年9月、財団はついに日本語の話せるスタッフの応募を始めました。日本語版Wikipediaのファシリテーターの役割を担う人を募集しているようです。これで問題が解決するかはわかりませんが、良いステップだと思います。
♦ 2021年11月、日本人ファシリテーターが決まったようです。柴田由美子さんという方です。日本語版コミュニティにおける問題は、今後彼女に直接報告するのが良いかと思います。連絡先はこちら。
Wikimedia財団の研究者による論文
♦ Wikimedia財団の研究者による論文が発表されました。編集者の「地理的な多様性」に欠けているWikipediaの言語版には、様々な問題が起きる可能性があるとし、日本語版ウィキペディアの問題にも言及しています。
BBBCによる調査
♦ 2021年11月20日、 BBCトレンディングで気候危機に関連するWikipediaの偽情報の特集があり、日本語版の問題についてコメントしました。番組内でウィメディア財団は「ボランティアを増やせばウィキペディアの質は向上する」と言っていますが、日本語版では明らかにそうなっていません。 とても無責任な態度だと思います。
日本語版Wikipediaの歴史修正主義に関する研究結果
♦ 2023年5月、日本語版ウィキペディアに関する研究で、歴史修正主義を広めようとする編集者グループの存在が指摘されました。この結果は、日本人ウィキペディアンたちが長年言ってきたことを立証するものです。
(参考文献)
1. Reliability of Wikipedia. (2021, January 07). Retrieved January 16, 2021, from https://bit.ly/3isDSME
2. Rector, L. H. (2008). Comparison of Wikipedia and other encyclopedias for accuracy, breadth, and depth in historical articles. Reference Services Review, 36(1), 7-22. doi:10.1108/00907320810851998
3. Wikistats – Statistics For Wikimedia Projects. (n.d.). Retrieved January 9, 2021, from https://bit.ly/360WluD
4. Kelly, J. (2021, January 06). “Misinformation” vs. “Disinformation”: Get Informed On The Difference. Retrieved January 16, 2021, from https://bit.ly/3o30JzF
5. Japanese PM Slammed During US Visit on Comfort Women Issue. (n.d.). Retrieved January 12, 2021, from https://nbcnews.to/3p4MIm2
6. Japanese Wikipedia. (n.d.). Retrieved January 04, 2021, from https://bit.ly/2LJqCHE
7. Projects, C. (2021, March 05). List of wikipedias by speakers per article.
8. Croatian Wikipedia. (n.d.). Retrieved January 04, 2021, from https://bit.ly/2XXLEEN
9. ウィキペディア日本語版. (2020, December 17). Retrieved January 16, 2021, from https://bit.ly/35WAYdU
10. Why victims of internet lies want Section 230 repealed. (n.d.). Retrieved January 08, 2021, from https://cbsn.ws/2XYUdiQ
11. Donors. (n.d.). Retrieved January 07, 2021, from https://bit.ly/3sK0ZHi
トンビ says
Wikipediaに誹謗中傷記事があったのでノートに指摘をした上で修正しました。今そのページには、修正を削除すべきだと言う議論が行った上で私の修正を削除した履歴だけが残っています。すなわち私が事前に修正の伺いを立てた事実だけが消されていました。
佐藤さんの記事を読んで、私だけではないんだと感じました。日本語Wikipediaには注意することが必要だと思います。
TFW says
「左でも右でもない」と自任しているアメリカ人ですが、佐藤先生の高見には全く共感です。
特に近代史関連の記事を読むと、「日本語版ウィキペディアはここがおかしい」と感じたり、時々「これはどう見ても右寄り過ぎて、いや、もはやいわゆるネトウヨのレベルじゃないか」と驚いたりしたこともありますけど、やっぱりぼく一個人の気のせいだけじゃないのですね。
ご指摘の通り、日本語は国際的な通用語である英語と違い、日本以外に話者はそもそも少なく、ましてウィキペディアを編集できるほど流暢に日本語を話せる人はなおさらです。このため、日本という一国の世論しかに影響されないことは、残念ながら、ある意味で仕方ないことかもしれません。言い換えれば、現状では「日本語版」より、「日本国版」のウィキペディアと呼ぶべきかもしれません。
そう言えば、日本語版のみならず、(程度の差こそあれ)韓国語版ウィキペディアにも見られる現象と言えますし、また、ヘブライ語版とアラビア語版のイスラエル・パレスチナ関係の記事を併読すれば、どちらにも、れっきとした偏向があまりにもひどい、とはよく言われています。
(ぼくは韓国語が少し分かるものの、ヘブライ語とアラビア語には全く無知で、これを自分自身の目で確かめることはできません。けど、少なくとも、ヘブライ語版では、「イスラエルによるヨルダン川西岸地区の『占領』」と書かず、代わりに「西岸地区の『統治』」と書いてあることや、23年の戦争が勃発してから、アラビア語版ではパレスチナの国旗が堂々と掲揚してあることは一目瞭然ですが。)
しかし、最も驚くべきのは、日本語版の管理者は41人しかいないことが、ぼくは知りませんでした。これほど影響力を持つウェブサイトは、なんと、ごく少数の人たちのプレーグラウンドになってしまった、というふうに痛感していますね。
もちろん、英語版ウィキペディアには偏向がない、と言い放つつもりは毛頭ありません。偏りが顕著な記事は英語版にも少なくなく存在し、イギリスのある有力紙も「信頼できないソースであり、ウィキペディア記事の出典としては認めない」と恣意にレッテル張られたこともありました。実は、日本で言えばネトウヨのような一部の人によって、「保守派による、保守派のための、保守派のオンライン百科事典」としてつくられたConservapediaなるものさえあります(今はなぜかアクセス不能の状態ですが)。
長文すみませんでした。日本語は上手でなく、乱筆乱文にて失礼いたしました。
福尾和弘 says
元々日本という国自体、真実や正確さよりも空気やモラルを優先する島国ですからね。
なので外国語版Wikipediaと比べると嘘やデマが蔓延しやすいわけですね。
個人的にはネット掲示板や嫌韓本など信憑性が保証されてないのを信じるのではなく、統計データや国立図書館などの書籍などを調べる必要があると思います。勿論それは大変ですが。
竹林 says
(先の”So far from the bamboo grove”に関する話題の続きです。:竹林より)
しかし、この本は実話ではなくフィクションであることが、日本人なら指摘さえされれば誰でも分かる点があります。この小説の冒頭あたりに、主人公の兄が予科練(少年航空兵の学校)に志願し、母親からそのとき不在にしていた父に相談してからにするようにと止める場面があります。このとき、兄は自分は18歳だから自分で決められると主張するのですが、これは米国人の成人年齢の感覚です。当時の日本や朝鮮の家父長制の下では、このようなことはありえません。戦後の米軍占領下で初めて家父長制は廃止され、成人年齢が定められますが、これも日本では20歳となりました(つい最近2022年に米国と同じ18歳に引き下げられました。)。作者は11歳で朝鮮から日本に引揚げ、民主化を経験し、日本で成人し、日本で米兵と結婚し、アメリカに帰化したことになっています。それが事実ならば、絶対にこのような間違いを起こすはずがありません。作者は、明らかに日本の成人年齢がアメリカと同じ18歳と思い込んでいます。
韓国の新聞の聯合が伝えるところによれば、作者がアメリカ帰化前の1952年に取ったという日本の住民票は、小説の内容と異なる点が多々あったそうです。作者の家族はもともと日系米国人で、太平洋戦争中の迫害を避けるべく日系人であることを隠すために、いったんは米国籍を捨てたものの、戦後、結婚を機に、やむをえず日本からの帰化という触れ込みで、米国籍を取り直した可能性も高いのではないかと、私は考えています。
日本語訳も出たものの、多くの人がこの部分を読み飛ばしているようです。しかし、当時の日本人が18歳を成人年齢と思うはずがないことは、今のところは指摘さえされれば、日本人なら誰でも「そんな日本人など、いるものか」と実感として気づくことです。しかし、2022年の成人年齢の引下げにより、あと20-30年も経てば、作者が成人年齢を18歳と思っていることのおかしさに、実感として分からなくなり、せいぜい「そう言われてみれば、成る程そんなものだろうか」と理屈としては理解できる、といった程度の人が多くなっているかもしれません。
そのためにも、この本が日本人女性たちが戦後の朝鮮半島で現地人の性暴行にあった証拠だというネトウヨの嫌韓デマに対し、この本はあくまで作者の想像で書かれたフィクションであるという評価を今のうちに確立しておかなければならないのですが、日本のWikipediaの日本語タイトル「竹林はるか遠く」の項目でこの指摘がなされたとき、この指摘はまもなく「独自研究」の名分で削除されました。他に、この本自体がレーガン政権下での反共主義の高まりをあてこんで書かれた可能性の指摘もありましたが、これも「要出典」とされ、いつ消されるかも分からない状況です。
竹林 says
現在2023年、Wikipediaは良心的な人の尽力もあり、ある程度良くはなっているようです。ただ、問題はまだまだあります。
ヨーコ・カワシマ・アトキンスさんの自伝と称される”So far from the bamboo grove”について、聞かれたことがありますでしょうか? 戦争の悲惨さを訴える良い小説だとは思うのですが、その中で朝鮮に住んでいた日本人女性たちが日本へと避難する途上で共産党軍や現地朝鮮の人々から性暴行を受けたという話が何度も出てきます。(近年の研究によれば、引揚途上の日本人どうしが夫婦同然の形となることはよくあったそうです。このことから、当時は出征兵士の妻が他の男とそのような関係になる事は事情の如何を問わず到底許されなかったため、実際には、郷里への帰還を前にして、女性たちが妊娠した胎児を外国人に暴行されたという名目で堕胎せざるを得なかったことが推察されます。)
この本をアメリカの中学校の教材に採用する動きが過去から続いています。かりに女性たちの妊娠が暴行によるものとしても、もちろん、この種の犯罪はどこの国でも誰が加害者としても起こり得ることです。しかし、朝鮮系米国人には、彼らへの偏見を掻き立てかねない物語として不安視し、教材採用に反対運動を起こしている人々もいます。彼らの主張は、一つには、性的題材を扱った小説を中学生の教材として使用するのは不適切であるという点、もう一つは、作者の想像による小説を、自伝というふれ込みを真に受けて実話として採用するのはおかしく、間違った歴史認識を子どもに植え付けるという点です。
大袈裟だと思いますか? ところが実際に、日本のSNS・ブログ等ネット空間には、この本は実話だ、この本が多数の日本人女性たちが戦後の朝鮮半島で現地人の性暴行にあった証拠だと主張し、朝鮮や朝鮮系の人たちがあたかも全て性虞犯者であるかのように宣伝するネトウヨがあふれているのです。いわゆる「嫌韓」という人々です。
Jacob Dong says
身为中国公民,祖辈曾为日本侵略中国的直接受害者,望日本国内有志之士能恢弘正道,主动与国内历史修正势力作斗争,前段时间发生中国小学语文教科书上的飞机插图是日本二战军机,经查画家曾往日本留学;南京玄奘寺的牌位上供奉有百人斩比赛的二人名字等等,都说明日本历史修正势力心怀鬼胎,在积极地培养海外势力,望日本国内有识之士拒绝坐视,有力地主动讲出真相,昭明真理,开创未来。最后,愿中日和平永葆(原谅为谷歌翻译)
中国国民として、私の祖父母は日本の中国侵略の直接の犠牲者であり,私は日本の崇高な理想を持った人々が正道を守り、国内の歴史修正勢力と主動的に戦うことを願っています。中国小学校の国語教科書の飛行機イラストが第二次世界大戦の日本の軍用機で、調べてみると日本に留学していたことが判明、南京玄蔵寺の位牌には百人斬り大会に参加した二人の名前などが刻まれているなど、日本の歴史修正勢力が積極的に悪意を抱いて海外勢力を育成していることを示しており、日本の識者が黙って傍観することを拒否し、昭昭なる真実が未来を創るという事を伝えてほしいと願っています。最後に、中国と日本の間の平和が永遠に続きますように(Google翻訳をお許しください)
Sato Yumiko says
非常感谢您的评论。 这真的意味着很多。
西本明広 says
右翼による戦争・人類滅亡から人類を救え。
佐藤さんの活動を断固支持します。
10年以上前はウィキペディアは正常だったと思います。
しかし特に、ここ数年でおかしくなっています。
南京大虐殺だけでなく、例えば尼港事件も西部劇のようなおかしさです。
シベリア出兵の一事件でしかないのに、尼港事件の方がシベリア出兵よりも記述が長く日本側が正義でソ連側が悪のような書き方をしています。
出兵・侵略していたのは日本の方にも関わらずです。
日本にとって都合の良い、日本を正当化する証言で埋め尽くされています。
ネトウヨが入りこんで歴史をねじ曲げていることは明らかです。
通州事件も西部劇同様です。
日本が満鉄を爆破して、爆破を中国の仕業に見せかけて、日本が中国に攻撃を仕掛け満州事変を起こして中国を侵略したにも関わらず、日本の侵略に対する中国軍の反撃を理由なき大虐殺かのように書いて日本を正義・中国を悪者のように仕立て上げています。
これは犯罪者を善玉にし、被害者を悪者にしているのと同様です。
ここまでくればインチキな西部劇やプロレスと変わりません。
中国に日本軍がいるという時点で、そもそもおかしいはずです。
アメリカに白人がいることがそもそもおかしいのに、インディアンの攻撃を大々的に描いて、インディアンの攻撃から始まったかのように描き、
あたかもインディアンが悪者で白人が善玉のように仕立て上げているインチキな西部劇そっくりです。
侵略者・犯罪者は西部劇の白人同様、日本人であることは明白です。
通州事件でも、尼港事件でも、本来侵略者・犯罪者の日本が正義であり、中国やソ連があたかも犯罪者であるかのように仕立て上げています。
何も知らない人が見たら完全に勘違いをしてしまいます。
それ以外にも応永の外寇も日本の約500回の倭寇が原因です。
竹島もそれ以前の日本の朝鮮半島侵略が原因です。
都合の悪いことは書かず良いことだけ書くのがネットに蔓延る右翼ソースの特徴です。
ウィキペディアは嘘と歪曲で塗り固めた右翼ソースと変わらなくなってきています。
尖閣も日中共同宣言3項を読めば、日本の領土でないことは明らかです。
日中共同宣言はサンフランシスコ条約よりも新しく、当事国同士の国際法でサンフランシスコ条約よりも有効なことは明らかです。
日本の教科書ですら事実を書いていません。
日本の教科書ですから、当然日本にとって都合の良いことが書かれているのです。
つまり、ただでさえ殆どの日本人が歴史の事実を知らされていないのです。
そこへネトウヨが入り込めば、日本人は日本にとって都合の良い嘘と歪曲された事実ばかりを教え込まれることになります。
これが戦争の原因となるのです。
はっきり申し上げておきますが私は先祖代々日本人です。
しかし日本人、特に右翼の嘘や右翼による過去の侵略や大量虐殺を断固として許してはならないと思っています。
ウィキペディアは数学や物理もあり教科書のような役割をしています。
それだけ信用度が高いはずのものなのです。
しかし歴史は悪辣なネトウヨに乗っ取られて、無茶苦茶な状態になっています。
日本は三韓征伐に始まり、朝鮮に繰り返し侵略しただけでなく、アジア諸国に膨大な侵略を繰り返し、太平洋戦争だけで2000万人以上も大量虐殺をした侵略常習国家です。
右翼の台頭を断固として許してはなりません。
数学や物理といった他のマトモな分野が見れなくなるのは残念です。
ウィキペディアに入り込んで歴史の分野を荒らしまくっている悪辣なネトウヨの無茶苦茶な跳梁跋扈を見ると、日本のウィキペディアへの資金を断つことも必要です。
そして歴史学者の強力も必要だと思います。
ここは断固とした対処が必要です。
こういう右翼の台頭を許していると最悪の場合、第三次世界大戦・人類滅亡も有り得ます。
人類を右翼の魔の手から守るべきです。
Sato Yumiko says
他のページの問題に関して教えていただき、ありがとうございます!
tomohiro mitunori says
日本語版は確かにひどいですね。たとえば、独自の研究を載せないと言うルールがありますが、あるベテラン編集者は自分の見解を引用もなくただ乗せていました。しかしそれでは偏った見解である事が明らかなので訂正してみたら、荒らしとされて、結局ブロックつまり排除されてしまいました。ブロック期限が過ぎても編集すれば直ぐに新たなブロックが始まる。そんな世界です。正論は通りません。問題を指摘しても、演説をしているとまともに取り合わず、管理人は上から目線でブロックする。理由もおざなりで、議論する余地なんてないに等しい状態です。
近年Wikipediaの日本語版は様々な場で引用されるようになりました。たしかに分野によってはまともな記事もあります。この点は否定しません。しかしひどい記事が多い事を大変心配しています。物事を議論したり考えたりするには、正しい情報が求められますが、間違いだらけのWikipediaでは到底その役を果たすことは出来ません。日本人の常識がWikipediaのために歪んでしまっているのではないか、大変心配しています。
Sato Yumiko says
ウィキメディア財団がようやく日本語を話せるスタッフを雇いました。柴田由美子さんという方です。もし、まだWikipediaの編集を続けていらっしゃるのであれば、彼女にこのような問題を報告すると良いかと思います。メールアドレスは、yshibata-ctr@wikimedia.org です。
宇井木辺出夫 says
素晴らしいご活躍だと思って拝見しております。成果に期待。
解決策としてのグローバル版のご提案ですが、
個別の記事に関しては、私はむしろ多様な意見が並立できるようにすること、
yourpediaの発想の方がよい解決策では?と思います。
youpediaの管理者には宗教右翼もいますが、
私が書いた記事は非常によい状態が保たれていると感じます。
一つにすべきは、方針・ガイドラインではないでしょうか。
一応、英語版と矛盾するルールにしてはダメ、という決まりはあると思いますが、
財団がルールのローカライズを各語版の「コミュニティ」に委ねてしまうので、
各語版の人達は、自分たちにとって都合の悪いルールを曲解して実質無効にしたり、
ローカライズしなかったりしていると思います。
例 https://en.wikipedia.org/wiki/Wikipedia:Sockpuppetry
(英語版と日本語版、同じルールになっていますか?)
それに、日本語版はローカルな方針・ガイドラインが多すぎて把握し切れないし、
互いに矛盾しているものもあると思います。
財団が責任をもって方針・ガイドラインをローカライズすべきでは?と思います。
Sato Yumiko says
コメントありがとうございます。ウィキメディア財団は、「各言語版コミュニティの編集の独立性を支持するため、コンテンツには関わらない」というスタンスを長年とり続けてきました。英語版はある程度の質が保たれているため、それでも大きな問題にはなっていません。ただ、クロアチア語版や日本語版における問題が公表されたことで、若干態度を変えたようです。現在、財団では日本語のネイティブスピーカーと協力して、この問題を調査していると言っています。ウィキペディアのコンテンツの問題やコミュニティでのハラスメントなどを ca@wikimedia.org に報告してほしいそうです。悪質な編集者のユーザー名などもご存知でしたら、メールでご報告ください。
宇井木辺出夫 says
ご返信ありがとうございます。10件ほど報告しました。調べていて、最近も割と「普通」な管理者の解任が続き、管理者グループは「ネット右翼ばかり」になったと感じます。宗教右翼は党派的に行動し、AIを搭載したBotでソックパペットの編集履歴を稼いだりする技術力もあるので、「匿名不特定多数による多数決」システムではそう成らざるを得ないように思います。よい解決策は何でしょうね。財団がどこまでやる気なのか、とりえあえず調査の経過を時々知らせてほしいと思います。
Sato Yumiko says
財団に報告いただき、ありがとうございます。日本語版でもソックパペットの問題が起きていますか?
宇井木辺出夫 says
ええ、もう5年前から盛んに使われていて、管理者の選任など、投票による議決はどうにでもなる状況だと思います。信者の動員(ミート)もあると思いますが、相当高度な編集を機械的に行うことができるbot(ソック)を使っている人も居ると思います。
ところで、財団からは10件の報告に対し、それぞれ英語で「日本語版の井戸端で相談してください。私達の仕事の範疇ではありませんので」的なお返事が来ました(文面は皆同じ)。無期限投稿ブロックされているのに、どうやって井戸端で相談しろというのか。昨日の今日ですし、メールの内容もよく読んでいなさそうです。調査どころか、報告を受付けるつもりもないのでは?財団に協力している日本語のネイティブスピーカー、本当に存在するのでしょうか。以下に文面を引用しておきます(一部伏せ字)。
Tom Paine (Wikimedia Trust & Safety / Legal)
Aug 23, 2021, 7:17 UTC
Hello XXXXXXXX
Thank you for reaching out with your concerns to the Wikimedia Foundation’s Trust and Safety team.
The Trust & Safety team has taken a look at the situation you reported in your 10 reports. Unfortunately, Wikimedia Foundation cannot assist in handling these requests as we defer to community governance in most matters, including how the community defines and handles abuse. Our suggestion would be to work with the Japanese Wikipedia community on this issue through the community village pump. You can also report a particular user-related concern if you see that the vandalism/abuse raises to the level that needs community intervention.
We would like to invite you to take a look at the range of actions that the Trust & Safety team may take, under our Office actions page, along with the requirements a situation needs to meet before we can review. Hopefully, this page helps understand why the matter is out of scope for the Wikimedia Foundation.
We are sorry that we cannot do more to assist in this situation, but we hope that the community process will be helpful for you.
Best regards,
Tom Paine
Trust & Safety Team
Wikimedia Foundation
Sato Yumiko says
ご報告ありがとうございます。ちなみに、どのような内容を報告されましたか?
宇井木辺出夫 says
順番前後しますがこちらにコメント致します。
例えば「Wikipedia:投稿ブロック依頼/正親町三条」
https://bit.ly/3myWmyT
で投稿ブロックされた「正親町三条」さんは被害者で、
依頼者や賛成したユーザー、管理者は集団で悪質なハラスメントをしている、
とかそんな感じで(宇井木)私が関わった事案を中心に10件報告しました。
自分が被害者の事案も多いですが、長くなりますので、省略します。
今日になって財団から
「対応に満足しましたか?」というアンケートが9通送られてきました。
なんだか機械的に処理されているようです。
当然「不満」で回答しましたが、、なぜ1通少ないのかも謎です。
Sato Yumiko says
情報ありがとうございます! 財団が本当に調べているのか、結果を見ないとわかりませんね。この財団は社会の圧力がなければ何もしません。コミュニティでのハラスメントやソックパペットは大きな問題だと思います。
宇井木辺出夫 says
ウィキメディア財団から2日遅れで10通目のアンケートが届きました。なぜ10通目だけ遅れたのか謎です。社会の圧力がなければ何もしない、というのは仰るとおりだなぁと思います。
ソック・ミートの事例は、LTA:TEAMF(ワールドメイトという神道系の宗教団体)のユーザー群、特にHusaというユーザの投稿履歴が割と分かり易いと思います。
例えば[[ノート:満州国協和会/過去ログ1]]
https://bit.ly/3ytOnWh
で「Husa」と「ぽてから」が「ササニシキ」さんにからんできた例があります。「晒し首事件 (シンガポール)」の記事に貼られた「中立性」テンプレは今もそのままですね。
彼等は2017年に追放されましたが、残存アカウントも多く、私のように被害にあったアカウントも救済されていません。
Sato Yumiko says
ご報告ありがとうございます。Wikimedia財団はディスインフォメーションに対応するため、新しいスタッフを雇ったそうです。Kate Levanという人で、メールアドレスは klevan@wikimedia.org です。日本語版Wikipediaの問題を財団にメールした人のひとりは、彼女に繋がったようです。彼女に連絡してみるのもいいかもしれません。
https://buff.ly/396wh2q
宇井木辺出夫 says
佐藤さま:グッドニュース!どうもありがとうございます。その後 2・3件追加で報告しましたが、今度は何も反応がなく。Levanさんのところに回付されているのでしょうか。対処に迷います。少し待ってみたいと思います。(2021年9月18日)
Sato Yumiko says
報告された内容にもよるかと思いますが、彼女に届いているといいですね。ちなみに、財団はようやく日本語の話せる人を雇うようです。日本語版のコミュニティと財団の間に入り、「ファシリテーター」となる人を応募しています。少しずついい方向に向かうといいですね。
Haru SH says
Wikipediaへの寄付に自分として正当性があるのか考えていて記事を拝見しました。
たまに英語版も見るのでそのボリュームの差には気付きますが、編集ポリシーやこうしたdisinformationについて初めて知り共感しました。
素晴らしい考察と行動力、これからも注目と応援させて下さい。
Sato Yumiko says
コメントありがとうございました。現在、ウィキメディア財団では日本語のネイティブスピーカーと協力して、この問題を調査しているようです。問題が解決されるまで寄付する必要は全くないと思います。
以前、特定の学派の考えに偏った修正があるように思った事があり、憂いています。それだけです。寄付済み says
以前、日本語版を読んで特定の学派の考えに偏った修正があるように思った事があり、憂いています。それだけです。(財団に寄付済み。日本語版で垢BANを受けた事があります。)
利用者:宇井木辺出夫 says
利用者:宇井木辺出夫@無期限投稿ブロック と申します。
ご指摘ご尤もと感じ入りました。英語版で問題を訴えても「そんなことは日本語版でやれ」という感じでしたので、ウィキメディア財団がこの問題について何とかしようと考えられているとは意外でしたが、対処頂けるならぜひして頂きたいと思っております。
LTA:TEAMF(皇道神道系の宗教団体・ワールドメイトの信者群)の件は御存知でしょうか。
私がWikipediaでどんな目にあったか、Yourpedia の 利用者:由亜辺出夫 の「印象操作にご注意ください」の節をお読みになって頂ければ、と思います。
「5ちゃんねる」の「ネトウヨのウィキペディアの偏向記事を改善するんだ」の818以下でも散々愚痴っております。
近視眼的には、
(1) 彼等のミート・ソックによって投稿ブロックに追い込まれたアカウント群(私自身を含みます)を救済して、また編集できるようにして頂きたい。 荒らされた記事を復元して頂きたい。
(2) まだ残存している彼等のミート・ソック(例えば、「利用者:市井の人」とそのソックパペット)を排除していただきたい。
(3) 彼等に特別な便宜をはかっていたビューロクラット「利用者:Jkr2255」と、管理者「利用者:アルトクール」「利用者:多摩に暇人」「利用者:KMT」を解任していただきたい(今も管理者かは分かりませんが)。
(4) 思想偏向的なハラスメントを繰返している「利用者:利用者:Quark Logo」とそのソックパペット、「利用者:森藍亭」「利用者:JapaneseA」などを排除していただきたい。
ということがあります。
より遠迂な対策として、
(5) ソックパペットを防げない以上、匿名不特定多数による議決で物事を決めたり、
管理者を選ぶ方法を止めていただきたい。
信頼できる人物を、実際に面談して選んでいただき、定期的にその行動をチェックして頂きたい。
(6) 英語版の方針と日本語版の方針に、齟齬が生じないことを保障して頂きたい(同一内容にして頂きたい)。
(日本語版のローカルルールは、不可解であったり、
ネット右翼にとって都合のいい内容に改竄されたり、
都合の悪いルールはローカライズされにくかったりする現状にある、と思います)
といったことでしょうか。
今思いつく限りで書いてみました。他にも思い出せばあるかもしれませんが、もう長くなりましたのでこれで失礼致します。
mukade says
他のコメントでもありますが、解決策の一つに他言語版のウィキペディアの記述を直接翻訳するという手法があります。どのページのどの版(バージョン)を翻訳したか要約欄に明記する必要がありますが、それを守れば基本的に他言語のものを勝手に翻訳しても良いという決まりになっています。
他言語版に存在する、信頼性のある出典のついた記述を(もちろん可能な限り出典の確認をして)翻訳する事は、自分で一から資料集めをするのに比べて比較的労力も低く、信頼性も高く、他言語版との隔たりを小さくする方法だと考えています。
Sato Yumiko says
コメントありがとうございます。翻訳によって日本語版ウィキペディアの質を向上させることは、重要だと思います。ただ、このコミュニティには悪質な編集者・管理者がいるため、上記のページを修正することが不可能です。ですから、この問題を解決するためには、財団が介入する必要があります。
mukade says
返信ありがとうございます。そして積極的に財団に問題提起していただいてありがとうございます。
ウィキペディアのガイドラインが歴史修正主義者に悪用されている、という問題提起に全面的に賛成します。同時に、現在あるガイドラインの多くは合意形成をするため、ディスインフォメーションを防ぐために必要だということも自明ですが、加えておきます。
サトウさんが指摘したように、問題の根底は日本語の情報が言語的に隔離されていることだと思います。結果、歴史修正主義的な情報が日本語圏には批判されずに蔓延しています。ただ、これはウィキペディアに限った、ウィキペディアの構造的な問題ではないと感じています。ある意味、ウィキペディアは他の日本語の情報源に比べ、よくやっているが、それでも至らない、と感じています。
財団の介入についても興味を持って見守りたいですが、コンテンツやユーザーに対するトップダウンの介入の効果には疑問が残ります。
まず、決断が不透明となることの危険性を強く感じます。例えば、前年末にQAnon系の投稿が大量にされた際、ウィキペディアの編集者はガイドラインを元に透明性を持って対処しましたが、ツイッターやFBは会社が不透明な基準で対処となり、結果なぜか対応されないコンテンツも多くありました。QAnonの場合のように、例えそういった検閲が結果的に正しくても、不透明な介入理由でコンテンツを左右できる権力は、現在存在する問題よりもはるかに危険だと個人的には思っています。また、介入にコストがかかるとすると、こういった権力を影響しようというお金が当然集まる危険性があります。これはまさにFBなどの大きな問題でしょう。
そもそもウィキペディアは、そうした問題を念頭に始まっているので、財団の介入はコンテンツではなく、ガイドラインやルールに縛られるでしょう。
ログインの必須性などは、今後AIによるディスインフォメーションが多くなることを考えると必要になる気もします。また、AIによる他言語版とのクロスレフェレンスは現実味があると思います。
なぜ翻訳を第一にあげるかというと、英語版の文章の著作権を気にせずに、日本語に翻訳できることは、ウィキペディア特有のアドバンテージだからです。言語に長けた少数の人が、日本語圏に存在しなかった(例えば731部隊についての)情報を日本語で提供できることを考えると、ディスインフォメーションと戦う一番効果的な戦略だと個人的には思っています。
もしこのコメントを読んでいる方がおられましたら、ぜひ翻訳に参加してほしいと思います。数人の積極的な編集者がいれば、大きく状況は変わります。あなたが歴史修正主義者なら、FBが寛容だと聞いたのでそちらをお勧めします。
731部隊のような個別の記事は、バックラッシュが強く莫大な労力がかかる事から関わってきませんでした。しかし、考えれば考えるほど無責任だと反省します。記事を見たところ、英語文献の出典がほとんどないので、どれほどの労力が裂けるかはわかりませんが、少し情報を足してみようと思います。
長々とした文章で恐縮です。
Sato Yumiko says
返信ありがとうございます。731部隊のページは編集が難しいと思います(現在ページは「保護」されています)。旧版を復元しようとしたユーザーは「過剰引用」が原因で、アカウントをブロックされました。その後、別のユーザーが引用なしで旧版を復元しようとしましたが、やはり無理でした。その時は「サイズの大幅な増減」という理由で削除されました。
権力ユーザーの中にネトウヨ・ウィキペディアンたちが数多くいますので、これらのページの編集を試みた場合、除去されたりアカウントをブロックされたりする可能性があります。もし、そのような問題が起こった場合は、具体的な内容を「信頼と安全 (Trust & Safety)」までご報告ください。メールアドレスは、 ca@wikimedia.org です。
この部署の部長や財団のCEOから連絡がありました。財団は日本語版の歴史修正主義の問題を認めており、対策を取ると言っています。結果が出るには時間がかかると思いますが、財団が確実に行動するように、引き続き責任を問う必要があると思っています。
日本語版のコミュニティにもmukadeさんのようにサイトを良くしようと試みている人がいることは、素晴らしいことだと思います!
th says
歴史の事件に対するホワイトウォッシングもそうですが、他にもチェリーピッキングに当たるような記事等、某匿名掲示板のまとめのような使われ方がされています。
ルールに基づき中立的な訂正案を出しても、管理者の政治思想等にそぐわない場合には採用されませんし、最悪ブロックされます。
正当性よりもヘイトの頭数で押し通されてしまう事も。
日本語版は百科事典からは逸脱して某匿名掲示板やオタク記事のまとめになっているのが現状です。
Sato Yumiko says
コメントありがとうございます。ウィキメディア財団の代表者と話をしました。日本語版ウィキペディア の問題に関して、財団に報告して欲しいそうです。メールアドレスは、ca@wikimedia.org(メールは日本語でOK)。
シマ says
日本語版Wikipediaに関する問題を提起するのは素晴らしいことだと思います。
特に管理者に関する指摘は目から鱗でした。
しかし戦争記事に関しては言語間で大きな違いがあっても仕方ないのではないでしょうか?
そもそも戦争に関する完璧な資料が存在するなら世界中で共通の資料が用いられているはずです。そうならないのは客観的に見た戦争と当事者になった時の戦争は全く違う見え方がするからです。
一例ですが韓国版Wikipediaと日本語版Wikipediaではベトナム戦争の戦争犯罪に関する記述が減らされていたりします。(韓国軍の虐殺に関する記載が減らされています)
Sato Yumiko says
コメントありがとうございます。日本語版ウィキペディアにおける歴史修正主義の問題に関して、その後の調査でわかったことを米誌「スレート」に書きました。その一部が日本語で読めますので、ご一読ください:https://gigazine.net/news/20210323-japanese-wikipedia-misinformation/
be says
あと思ったのはこういった常識的な歴史ってのを知らないで育ったら
人間性疑われるってとこだよね今回の香港の戦いとかに出てくる場所とかに
観光とかで日本人だけが知らないでズカズカ入って行って何が起こったとか分からないで
平気な顔してKYな事やったら大事件でしょ…まさかなかったーとかトンでも発言したら
完全アウトだほんと怖いよ歴史すら知らないで育つってのは…
Ayani Willka says
長くなりますので読み難いですが…
「検証可能性」なる一語句の扱いにだいぶ恣意的なものを感じることがあります。書き込んだ文の出典となる書籍文献の情報を「(自分が)信頼出来ない」と云う理由で、出典無効だとして除去・差戻しを行なう利用者の存在が編集合戦を引き起こしているとか。
逆に「己の記憶や感情」だけを頼ってその検証可能性を無視して雑多な書き込みをする利用者(ブロックされている筈の利用者の捨てアカウントや、非ログインユーザーのような)も多く、そうした無出典の書き込みを行なう者は編集合戦上等、記事が半保護されても期間が明けたら編集合戦を再開してとにかく自分が編集した版で残りさえすればいいと云う姿勢も見られます。
やはり殆どの利用者が匿名であること、複数のアカウントを(際限なく)作成・使用できること、ログインしなくても勝手に書き込めること…などに問題があるのでは無いでしょうか。
奈良たかし says
私も歴史修正主義者、差別主義者の「ヘイトデマ、フェイクニュース」になるWikipediaの行方を危惧しています。「多くの人が編集し続けければよくなっていく」というのはアメリカ独特の価値観で日本語版wikipediaは孤立していてそうならない面が強い。私は「Wikipediaは、そのガイドラインをゲームのルールのように熟知した者」という点では、かなり以前から編集しているので、私も一定詳しいです。勉強せず出典を示せないものや、ルールを知らない人が直すのも難しい。どうすればいいのか、わからないでいます。
Sato Yumiko says
「『多くの人が編集し続ければよくなっていく』というのはアメリカ独特の価値観で日本語版wikipediaは孤立していてそうならない面が強い」←その通りだと思います。様々な国籍の人たちが編集している英語版と、主に日本人のみで編集している日本語版が異なることは明らかです。日本語版ウィキペディアで起こっている「歴史修正主義」などの問題はその結果です。
「『Wikipediaは、そのガイドラインをゲームのルールのように熟知した者』という点では、かなり以前から編集しているので、私も一定詳しいです」←そもそもウィキペディアのルールはミスインフォメーションやディスインフォメーションを防ぐためにあります。日本語版ウィキではそれが防げていませんので、ルールは目的を果たしていません。
貴重なコメントありがとうございました。
反ネトウヨ says
Wikipediaの「万人坑」見てみてください。
あきらかに万人坑を否定していて、一方的です。
私は、すこし直しましたが、多忙で資料も集められないので、心残りです。
Sato Yumiko says
コメントありがとうございます。「万人坑」に詳しくないのですが、具体的にどの辺がおかしいのか教えていただけますか?
ジミーウェールズ says
日本版ウィキペディアの管理者には知識人を装ったマフィアのようなテロリストが多く混じっているのは、実際にわたしも知っています。革命を起こす必要があります。彼らのような悪人をつぶす為には、国際的な大きな権力に手を借りる必要があると思っています。勇気ある活動を真面目に行っている方を尊敬しています。何かあれば助けますので、これからも頑張ってください。
加藤泰一郎 says
佐藤さんの取り組みに賛同します。わたしは少額ですがWikipediaに寄付をしています。しかしそのお金が公正な情報作成に使用されていないとしたら残念です。寄付を止めるべきでしょうか。また、わたしは日本語版のWikiが不十分だと感じたときは英語版を見るようにしています。そして多くの場合その内容が日本語版で不十分なことに気が付いています。そこで、例えば南京虐殺について英語版の内容をそのまま日本語に翻訳して日本語版に掲載することは可能なのでしょうか?これも日本語版の編集者の許可が必要なのですか?
すけ says
機械翻訳の文を使わず、かつどの版からの翻訳であるかを要約欄で示せば問題ないと思います。出展明示も忘れないでください。
加藤泰一郎 says
コメントありがとうございました。少し時間がとれるようになったら翻訳にチャレンジしてみます。Wikipediaにはかなりお世話になっているので日本語版の正確性・信頼性を向上させたいです。
mukade says
こんにちは。ウィキペディアで翻訳を行なっているものです。翻訳について質問があればご相談ください。
また、投稿前の体裁やガイドライン遵守のチェック程度なら可能なので、このコメントに返事いただけたら確認します。
sa says
毎年少額を寄付しているだけでログインした事が無いレベルの者です。以前に修正合戦の事は聞いていましたが、詳細な内情に関してはは全く無知でしたので参考になります。改めて見てみたら、管理者への立候補や解任等に付いても明記されていて驚きました。これからは関心を持って見ていきたいと思います。
透 says
どんなサイトにもルールはあるとは言っても、Wikipediaのルールは特に複雑怪奇で、多くの人が参加するのが難しい仕組みになっていると思います。そのせいで一部の利用者による独占、嘘の蔓延が出てきている。そういった仕組みの部分をもう少し見直せば、大分ましになるのに、残念。
匿名のウィキペディアの人 says
この日記に書かれていることに賛同します
実際に書き換えても消されることが多かったりノートページでも屁理屈(ルールをこねすぎること)をすることが多くて自浄作用が機能してないように思います
いつかこれが改善されることはあるのだろうか
julyseabreeze (@lovely_catfish) says
慰安婦に関する記述の違いは、東南アジアでの植民地政策での記述でもご指摘のような問題があって、同様の問題意識を持っていました。他にも、朝鮮戦争の記述で、特に初期に米軍が北朝鮮に圧倒されている部分の記述が日本語版は英語版に比べてそれほど詳しくないとか、保守層が嫌う?ような内容の記述が少ない傾向があると思います。以前に、慰安婦は存在していた、と自分がコメントしたニュースサイトで発言がサイトの管理者(BLOGS)により削除されたりとか、ネットのメディアも保守よりのところが普通にあるので、wikiに限らないことだと思います。
解決策は、難しいですよね。。。翻訳技術がもっと進化して他国語版の参照が容易になれば〜というのは、時間がかかるけど、一つの解決策になるかと思います。
ただ、今回は、日本国内での限定条件で歴史修正が相当数いる、海外という多数の目にとまる場では、そういう歴史修正が修正される、という方向性になりましたが、例えば、最終的にそれを貫徹すると、少数の正論、というものがあった場合に(世界規模で考えて)、それが抹殺される可能性がでてくる問題があるのではないかとも思います。例えば、使用言語人数でいえば、中国語が一大勢力になりますから、他国語版との境界がなくなると、中国語圏的な理解の影響が大きくなりすぎるのでは? とも。
記事の編集者の多様性がある英語版で正確性が担保されている、という視点では、https://bookmeter.com/books/284417
「みんなの意見」は案外正しい
の本に似ているなと思いました。
島 says
ウィキペディアの日本語版にだけある特殊性について例を挙げて説明していただいてありがとうございます。初めて編集者のグループがあるということを知りました。創立者の理念に同意してこれまで参考にしてきました。記述に偏りがあるかもしれないことは承知していましたがはっきりと指摘されたことは衝撃でありまた非常に刺激的でもあります。ディベートの習慣が我々の社会に根付いていないことは別の場面で今痛感しています。このような問題を解決しようとする活動はとても大切で価値あることだと思います。是非続けてください。ウィキメディアへの寄付をしばらく停止しようとおもいます。
rzt says
大変重要なご指摘だと思います。戦争分野に限らず、今の日本語版Wikipediaは特定の方向に世論誘導したい人にとって便利なプロパガンダ手段になってしまっていると感じます。
それとご存知かもしれませんが、過去の特定の日時(版)のページを引用したい場合はページ上部の「履歴表示」からその版のページに移り、ブラウザのURLバー、あるいはページ左側の「この版への固定リンク」、「このページを引用」などからURLが取得できるのでお試しください(デスクトップ版ページの場合)。
すけ says
> 私が行ったすべての編集は、数時間後にすべてに元に戻されてしまいました
Wikipediaにはノートページというものがあります。その記事のノートページや投稿を取り消した人のノートページに取り消した理由を尋ねるのもありだったと思います。
池田美代子 says
さとうゆみこさん、戦争の歌が聞こえるを読みました。日本の戦争の加害の部分をとても細やかに書いていらしてとても勉強になりました。
ウィキはよく利用しますし、たまーに少額ですが寄付もしていました。佐藤さんの指摘に大変びっくりしました。
veinmx9699 says
私も、日本語版wikipediaの慰安婦問題に関連する項目や、2015年日韓合意に関連する記述、日韓関係の歴史に関する記述などが、日本国内の保守系言論の「俗論」を強く反映しており、全く客観性にかけるため、いままで何度も修正を試みてきましたが、ほとんど即座にまた元に戻されてしまいます。最近は、もうあきらめの境地でほっといてます。別にナショナリズムや保守の立場でもそれは一つの考えとして良いのですが、事典の記述としては、もう少し客観性を心がけて記述してほしいものです。
Hal says
自分はzh/enの編集者ですが、佐藤さんの意見にまったく同感です。「jaはwikimediaの本来の趣旨からかなり逸脱している」というのが、こちらのコミュニティのjaに対するイメージですね。
澤西康史 says
私も日本語版Wikipediaが、個人の嗜好に基づく恣意的な引用などで、きわめて偏向した内容になりうることを痛感する者のひとりです。英語文献からの引用ですと、意図的な歪曲があるかないかを判定できる人は少ないでしょう。
また、その項目に関わる当事者は執筆してはいけない、学術文書でないと引用してはいけない、といったガイドラインが過度に強調され、悪意を持った執筆者によって都合の良いように利用されうるのです。
Wikipediaは、そのガイドラインをゲームのルールのように熟知した者だけが、偏向を含んだ執筆者としての縄張りを確保できる、といったことが起こりうるシステムのように思えます。
おそらく、Wikipediaを自己満足のために、オンラインゲームのような遊び場にしている執筆者がいるのではないでしょうか。
ガイドラインを盾にとって、自分に都合の良い片寄った記述を守ろうとする傾向が見られるのです。新参者は煙に巻かれます。例えば、料理の項目で、料理学校の先生の記述より学者の記述が優先されるとしたらおかしいですよね。
Wikipedia、特に日本語版には多くの問題があります。看過できないと思っています。匿名性を排除すれば多少の改善はありえるでしょう。Wikipediaが抱える問題を一般の人に認知してもらえるよう、啓発がぜひとも必要です。
Sato Yumiko says
コメントありがとうございます。「Wikipediaは、そのガイドラインをゲームのルールのように熟知した者だけが、偏向を含んだ執筆者としての縄張りを確保できる」というのは実際に起こっている事だと思います。特定のページをモニタリングすることで、誰かが編集した場合にはすぐに通知を受けることができます。そして、その編集をすぐに元に戻すことができます。日本の戦争犯罪のページなどはそのような人たちがいるのでしょう。
AONUMA Toshifumi says
私も、同様の批判的意見を、日本語版ウィキペディアに対して抱いてきました。
あなたの取組みに敬意を表します。
Sato Yumiko says
ありがとうございます!