日本語版ウィキペディアの「歴史問題」
昨年に刊行された『戦争の歌がきこえる』(柏書房)は、私がアメリカのホスピスで音楽療法士として働いていた時に出会った、第二次世界大戦経験者について書いた本です。執筆のために第二次世界大戦について様々な資料を調べている時、日本語版ウィキペディア(Wikipedia)の奇妙な現象に気づきました。
歴史上の出来事をインターネットで検索をすると、必ず最初にヒットするのはウィキペディアのページです。しかし、日本語と英語で同じトピックを検索すると、ページの内容がかなり異なることに気づきます。特に、日本の戦争犯罪などセンシティブなトピックに関するページは、バイアス(偏見)やミスリーディング(誤解を招く)な情報で溢れています。
間違いやバイアスだらけのウィキペディア
「ウィキペディアには間違った情報が多いことは知ってる」という方もいると思います。でも、英語版ウィキペディアは一般的に信頼性が高いことは知っていますか? 英語版ウィキペディアの正確さについて調べたリサーチはいくつかあり、その結果は様々ですが(*1‐2)、日本語版ウィキペディアで起こっているような明らかな偏見は見つかりません。
また、教養のある大人が「ウィキペディアの情報を鵜呑みにしてはいけない」と知っていたとしても、子どもたちはどうでしょう? 歴史に関する知識が浅い子どもがウィキペディアのページを読み、その内容を事実として信じてしまう可能性は高いと思います。
日本語版ウィキペディアの影響力
実際、日本語版ウィキペディアは非常に人気があるサイトです。現在、ウィキペディアは300以上の言語で開設されていますが、日本語版は英語版の次に最も利用されている言語版です。 2020年12月のデータによれば、日本語版ウィキペディアは1か月間で12億回のページビューがありました(*3)。これほど多くの人が利用しているサイトですから、その影響力は計り知れません。
私はこの問題について、詳しく調べてみることにしました。ウィキペディアの仕組みや日本語版の特徴などをリサーチする中で、いくつか興味深い発見がありました。
来月、その調査結果を Interaction 21 という学会で発表します。世界各国のUXデザイナーが参加する学会で、今年はオンラインで開催されます。UXデザイナーとは、ユーザー・センタード(
日本語版ウィキペディアで何が起きている?
本題に入る前に、いくつか言葉の説明をしたいと思います。
ディスインフォメーションとは?
- インフォメーション(information):情報。
- ミスインフォメーション(misinformation):間違った情報。虚偽。
- ディスインフォメーション(disinformation):故意に流す虚偽の情報。ミスインフォメーションを「意図的に」広めること。より一般的には「偏った情報」や「操作された情報」を指して使用される (*4)。
近年、テクノロジープラットフォーム(インターネットプラットフォーム)で広がる「ディスインフォメーション」が世界中で問題になっています。欧米では特に Facebook, Twitter, YouTube などのソーシャルメディアを通じてディスインフォメーションが山火事のように広がり、民主主義を脅かしています。ウィキペディアはソーシャルメディアではありませんが、テクノロジープラットフォームのひとつです。
日本語版ウィキペディアでは、日本の戦争犯罪などセンシティブなテーマを扱うページがディスインフォメーションで溢れています。日本人にとって不都合な情報や居心地の悪い内容は省略されていたり、故意に曖昧になっています。このような行為は”ホワイトウォッシュ(whitewash)”と呼ばれます。物事をごまかし、罪や事実を隠すという意味の動詞です。
日本語版ウィキペディアにおけるディスインフォメーションやホワイトウォッシングの例をいくつか紹介します。
※ウィキペディアの性質上、ページの内容は変わる可能性があります。下記に挙げる例は2021年1月時点の検索項目です。
香港の戦い
1941年12月8日、真珠湾攻撃と同日に起こった「香港の戦い(英語:Battle of Hong Kong)」。聞いたことがない人も多いかもしれません。私も学校で習った記憶はありませんが、『戦争の歌がきこえる』で紹介した中国生まれの患者さんと出会ったことで、この戦いを知りました。
香港の戦いでは、日本軍による虐殺(英語:massacre)やレイプが起こったことが広く報告されています。しかし、日本語版ウィキペディアのページにはそのような記述は一切ありません。英語版ページには “Massacre(虐殺)” という欄があり、10件以上の事件に言及しています。
- 日本語版Wikipedia:香港の戦い »
- 英語版Wikipedia:Battle of Hong Kong »
慰安婦
日本と韓国のあいだで最も物議を醸している歴史的トピックのひとつが「慰安婦(英語:comfort women)」です。日本語版ウィキペディアのページの冒頭では、慰安婦の説明に「売春」という言葉が使われています。ページ全体を通して、「売春」「レイプ」「慰安婦」という言葉を意味を区別せずに使用することによって、問題の趣旨を曖昧にしています。
近年、安倍前首相を含むナショナリストたちは慰安婦の「強制性を示す証拠はない」と主張しています(*5)。ウィキペディアの内容はこの主張と一致すると言えます。一方、英語版では慰安婦は “sex slave(性奴隷)”と称されています。
- 日本語版Wikipedia:慰安婦 »
- 英語版Wikipedia:Comfort Women »
南京大虐殺・南京事件
歴史的トピックで議論を引き起こすもうひとつのテーマが「南京大虐殺(英語:Nanjin Massacre)」です。日本版ウィキペディアのページで最初に気づくことは、名称が「南京事件」となっており、「南京大虐殺」ではないことです。ちなみに英語で “Nanjin Incident(南京事件)” と書いた場合、1927年に起きた別の出来事を指します。
また、このページの奇妙な点は、事件に関連する写真がないことです。唯一掲載されているのは「中山門」の写真と「南京城内で避難民にまぎれて逃亡を企てた中国軍正規兵を調べる憲兵」と題した写真のみで、虐殺とは直接関係ありません。
さらに、ウィキペディアの歴的的な出来事に関するページには、右側に主要部を掲載した枠があり、そこに写真、犠牲者数、日付、場所、などのハイライトが掲載されています。でもこのページにはその枠がありません。写真だけではなく、犠牲者数も明記されていません。
一方、英語版ウィキペディアでは、犠牲者や虐殺の現場を含む沢山の写真が掲載されています。またページの右側の枠には写真と共に推定の犠牲者数が明記されています。
Nanjin Massacre(左)・南京事件(右)

- 日本語版Wikipedia:南京事件 »
- 英語版Wikipedia:Nanjing Massacre »
アメリカの戦争犯罪 VS 日本の戦争犯罪
日本語版ウィキペディアが「日本の戦争犯罪」をホワイトウォッシングしているのと同じく、英語版ウィキペディアでも「アメリカの戦争犯罪」について同じことをしているのではないか? そう考える人もいるかもしれません。
しかし、英語版ウィキペディアの「United States War Crime(米国の戦争犯罪)」と日本語版ウィキペディアの「日本の戦争犯罪」のページを比較すると、その違いは明らかです。
United States War Crimeのページでは犯罪の詳細が詳しく記されており、写真もあります。日本の戦争犯罪のページでは犯罪についての説明はなく、箇条書きされているのみで写真もありません。
United States War Crime(左)・日本の戦争犯罪(右)

- 日本語版Wikipedia::日本の戦争犯罪 »
- 英語版Wikipedia:United States War Crime »
プロパガンダは「疑い」の種を植える
上記に挙げた例はごく一部です。日本語版ウィキペディア内で歴史のテーマを検索すると、ディスインフォメーションが次々と見つかります。
もし、歴史修正主義者(英語:historical revisionists)が日本語版ウィキペディアのページを見た場合、自分が信じていることを正当化するツールとなるでしょう。でも、ウィキペディアを訪問する大多数の人は歴史修正主義者ではないと思います。戦時中に日本がアジア諸国で行ったことについて詳しく知らなかったとしても、ある程度の知識はあるでしょう。だとすれば、ウィキペディアのページを読んですぐに内容を信じてしまう、ということはないかもしれません。ただ、自分の知識を疑ってしまう可能性はあります。
「もしかしたら、これまで自分が持っていた歴史的な知識は間違っていたのかもしれない」
「もしかすると、学校で学んだことは事実ではなかったのかもしれない」
このような「疑い」の種を植えることが、プロパガンダの狙いです。ウィキペディアを読んだ人がその内容を全て信じなくても、その人が自分の知識に疑いを持つだけで、歴史修正主義者の目的は達成したと言えます。だからこそ、日本語版ウィキペディアで起こっていることは危険であり、真剣に受け止める必要があるのです。
日本語版ウィキペディアからの返答
ウィキペディアを運営しているのは、アメリカの非営利団体であるウィキメディア財団(英語:Wikimedia Foundation)です。私はこの財団に連絡し、日本語版ウィキペディアで起きている問題を(英語で)報告しました。でも財団からの返答はなく、代わりに私のメールは日本語版ウィキペディアのコミュニティに転送されたようです。そして、日本語でメールが届きました。そこにはこう書かれていました。
ウィキペディアの母体であるウィキメディア財団は、サーバ運営や
寄付募集を行っていますが、個々の言語版の記事内容には容喙しま せん。日本語版の内容は日本語版の編集者コミュニティの自治にゆだねら れています。ウィキペディアは基本方針を守る限りどなたでも自由に編集していただける百科事典です。ガ イドブックをご覧になって、項目のノートページ にコメントをお書きください。
要するに、コンテンツに問題があるならば、自分で編集すればよい、と。
誰もが自由に編集できる、というのは本当?
早速、問題のあるページを編集してみました。必要な文章を追加し、間違っている部分を削除しました。でも、私が行ったすべての編集は、数時間後にすべて元に戻されてしまいました。まるで編集がなかったかのように、すべて消されてしまったのです。
そもそも「南京事件(南京大虐殺)」のページは、編集ができないようになっていました。このページは管理者(英語:administrator)が誰も編集できないように「保護」の状態にしています。このページを編集できるのは管理者だけです。
ウィキペディアの「管理者」とは誰?
ウィキペディアの管理者は、ユーザーのブロック、ページの削除、ページの保護、制限なしでページの名前を変更、保護されたページの編集、および編集の自動復元などを行う権限を持っています。
日本版ウィキペディアは、ユーザーに対する管理者数が最も少ない言語版として知られています(*6)。登録されている118,000人のユーザーのうち、「管理者」はわずか56人(0.29%)(*7)。つまり、ごく少数の人々がプラットフォームをコントロールしているのです。
ウィキペディアは「誰もが自由に編集できる」という考えは、ミスリーディングです。厳密には正しいと言えますが、実際はそうではありません。一部の管理者が権限を持っており、編集したところでその編集が反映されるとは限らず、使いこなすにはウィキペディアに関するかなりの知識が必要です。
なぜ、日本語版ウィキペディアで「歴史修正主義」が広がるのか?
では、なぜ日本語版ウィキペディアでは歴史修正主義が広がっているのでしょうか? 英語版では同じような問題が起きない理由は何でしょうか? その理由には大きく分けてふたつあります。
言語の特徴
英語は世界67か国で公用語として採用されています。また、英語を話す人は世界に約15億人いると言われています。英語は様々な国籍、人種、文化、バックグラウンド(ある個人の性格や思想を形成する基盤となった境遇や環境など)を持つ人々によって話されている言語です。対照的に、日本語は主に日本で話されている言語です。
日本語版ウィキペディアのユーザー(編集者)や管理者のほとんどが日本人ですから、英語版ウィキペディアに見られるような国籍やバックグラウンドの多様性はありません。そのため、日本中心の偏った内容ができやすいのでしょう。
他の言語版でも似たような傾向が見られます。例えば、クロアチア語版ウィキペディアは、ファシズムや歴史修正主義を促進していることが報告されています。興味深いことに、クロアチア語版ウィキペディアも第二次世界大戦中の戦争犯罪を「ホワイトウォッシュ」していることが指摘されており (*8)、日本語版ウィキペディアと同様の問題が起きていることがわかります。
日本語版やクロアチア語版などのウィキペディアは、英語版と比べてはるかに孤立しているため、特定のトピックにおいてバイアスが掛かる可能性が高いのです。
啓蒙主義の価値観
ウィキペディアを含む、Facebook, Twitter, YouTube などのテクノロジープラットフォームは、西洋の価値観に基づいて作られたものです。もっと具体的に言うと、啓蒙主義(英語:enlightenment)の価値観が基盤となっています。ウィキペディアの創設者であるアメリカ人のジミー・ウェールズもウィキペディアを「啓蒙プロジェクト」と呼んでいます。
17世紀から18世紀のヨーロッパで広まった啓蒙主義の価値観の中で、重要なポイントをいくつか挙げます。
- 言論の自由
- 理性(英語:reason)を使用して真実(英語:truth)にたどり着く
- 公共圏(英語:public sphere)において社会問題を自由に議論する
公共圏とは?
「公共圏」は聞きなれない観念かもしれませんが、フランスの「サロン」がその例です。サロンとは文学者、芸術家、政治家などの社交的な集まりです。このような場で「社会問題を自由に議論し合う」ということをヨーロッパ人は何百年も行ってきました。アメリカ人は子どもの頃から自分の意見を持ち、それを表現することの大切さを教えられ、学校ではディベート(討論)の練習をすることもあります。
このような文化で育った人たちにとって、ウィキペディアは公共圏であり、その目的は様々な意見を出し合い、活発に議論することによってトゥルース(真実・事実)にたどり着くことにあります。
しかし、このような価値観が世界中に浸透しているわけではありません。日本には「公の場で社会問題を自由に議論する」伝統はありませんし、ツイッターなどで「匿名」で意見を言うことはあっても、実名でオープンに議論し合う機会はとても少ないと思います。
日本語版ウィキペディアには匿名・未登録のユーザーが多い
このような日本社会の特徴が日本版ウィキペディアにも反映されています。例えば、2007年の調査では日本版ウィキペディアの編集者の40%以上が未登録で匿名のユーザーとなっており、主要10言語のウィキペディアのうちで最も高いことが報告されました (*9)。日本語版ウィキペディアは「公共圏」ではなく、むしろ「匿名掲示板」のようになっていることがわかります。
匿名・未登録のユーザーによる編集

Source: Wikipedia
編集合戦とは?
ウィキペディアではコンテンツに同意しないユーザーがお互いの編集を書き換える、という事態が起こる場合があります。これを編集合戦(英語:edit war)と呼びます。
編集合戦はどの言語版でも起こりますが、日本語版ウィキペディアではかなりひんしゅくを買うようです。数回の編集が起こっただけで「編集合戦」と見なされ、管理者がページを「保護」する場合もあるようです。実際、日本語版ウィキペディアは他の言語版に比べて、保護されているページ数が多いことで知られています (*6)。
本来ウィキペディアは「理性を使用してトゥルース(真実・事実)にたどり着く」という価値観に基づき、様々な意見を議論し合うことによってコンテンツを作ることを目標としていますが、日本語版ウィキペディアでは必ずしもそうなっていないのです。
どうすれば、ウィキペディアを変えることができる?
ウィキメディア財団がこの問題を解決しようと思えば、様々な対処法があると思います。
- 登録ユーザーのみが編集できるようにする
- 管理者のトレーニングを含む監視(英語:oversight)を提供する
- 言語間のコラボレーションを増やす
登録ユーザーのみが編集できるようにすることで問題は完全に解決しなくても、ディスインフォメーションを投稿するユーザーを減らすことはできるかもしれません。ウィキペディアに限らず、テクノロジープラットフォームに監視は必要不可欠です。ウィキメディア財団がこれを行っていない理由は、下記の「セクション230とは?」をご覧ください。
AIを使用した、言語間でのコラボレーション
ウィキメディアは300以上の言語で開設されていますが、言語間のコラボレーションはほとんどありません。デザインを変更することで、言語間で内容が異なるページを読者に知らせることができます。
AI(人口知能)のテクノロジーを使って同じテーマを扱った異なる言語版を比較し、内容がどれだけ異なるかを調べます。難しそうに聞こえますが、実際にはテクノロジーを使って比較的簡単に行うことができます。言語間で内容が大きく異なる場合、ページに通知を追加して読者に知らせるのです。そうすることで、読者はページにミスインフォメーションやディスインフォメーションが含まれているかもしれない、とわかります。
セクション230とは?
これまで挙げた解決策を実行するためには、ウィキメディア財団が問題を認めて行動する必要があります。でも、財団はコンテンツには全く関与しない、というスタンスを取っています。日本語版ウィキペディアから私に送られてきたメールにも「ウィキメディア財団はサーバ運営や
1996年にアメリカでは「セクション230(英語:Section 230 of the Communications Decency Act ) 」が成立しました。ユーザーがサイトに投稿した内容から、テクノロジープラットフォームを保護する法律です。ウィキペディアを含むテクノロジープラットフォームは、この法律に守られています。ユーザーが投稿したコンテンツに関して訴えられる心配はなく、責任を負いません。
しかし、セクション230はこれらのプラットフォームが発明される前に成立した法律です。今日、テクノロジープラットフォームでは数々のディスインフォメーションが広がり、民主主義を脅かしています。また、これらのプラットフォームを通じて個人が殺害を強迫されたり、名誉毀損を受けたりすることも大きな問題となっています。そのため、この法律は廃止されるべきだという動きが高まっており、近い将来そうなる可能性があります(*10)。次期大統領のバイデンもこの法律は無効にすべきだと言っています。
もしそうなった場合、FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアは大きく変わるかもしれませんが、ウィキペディアにどのような影響があるかはわかりません。ウィキペディアは英語圏では高く評価されており、ソーシャルメディアに比べてむしろ「良い例」と考えられているためです。
ウィキメディアの責任と義務
今回私がインターナショナルな学会でこの問題を発表しようと思った理由は、日本語版ウィキペディアで起きている問題を海外の人にも知ってもらう必要があると思ったからです。テクノロジープラットフォームで起きている事は、最終的にはそのプラットフォームを作り、運営している会社や団体の責任であるはずです。ウィキペディアの場合も同じく、日本語版ウィキペディアで起きている問題の責任は、ウィキメディア財団にあります。まずは私たちがそのことを認識し、財団に改善を要求する必要があるでしょう。
ウィキメディアのミッション(理念)
ウィキメディア財団は寄付金によって支えられています。サイトを運営するためには年間2500万ドルほどの費用がかかると言われおり、かなりの寄付金が必要です。寄付者は世界中にいますが、財団のサイトによれば、主な後援者はアメリカの財団や個人のようです(*11)。
先述したように、英語版ウィキペディアの評判は高く、ジミー・ウェルズの啓蒙思想に同意する人はとても多いです。寄付者の多くはその理念に賛同しているのでしょう。
ウィキメディア財団のサイトには下記のようなミッション・ステートメント(財団理念)が掲載されています。
The mission of the Wikimedia Foundation is to empower and engage people around the world to collect and develop educational content under a free license or in the public domain, and to disseminate it effectively and globally.
(訳)ウィキメディア財団のミッションは、世界中の人々に無償の使用許諾またはパブリックドメインで教育コンテンツを収集および開発するツールを与え、それを効果的かつグローバルに広めることです。
日本語版ウィキペディアのページの多くは「教育コンテンツ」とはとても言えません。もし、寄付者がその現状を知った場合、寄付を続けるでしょうか? ウィキメディア財団に改善を求めるかもしれません。日本語版ウィキペディアの問題を解決するためには、寄付者や利用者からのプレッシャーが必要です。
まとめと考査
日本語版ウィキペディアはディスインフォメーションで溢れています。特に日本の戦争犯罪などセンシティブな歴史に関するページでは、問題の趣旨を曖昧にしてごまかし、事実を隠す傾向があります。ウィキペディアが歴史修正主義を生み出したわけではありませんが、それを加速していることは明らかです。日本語版ウィキペディアは1か月間で10億以上のページビューがある人気サイトであるため、その影響力は計り知れません。
英語版ウィキペディアは正確性や信頼性において評価が高く、欧米では他のテクノロジープラットフォームと比べて「良い例」として語られることが多いです。しかし、言語や文化の違いから、日本語版は英語版と同じように機能していません。
ウィキペディアを改善するための解決策はいくつもありますが、ウィキメディア財団が責任を取らない限り、根本的な変化は起こらないでしょう。近頃、テクノロジープラットフォームが広げるディスインフォメーションが世界各国で大きな問題となっており、プラットフォームの責任や義務が問われています。この現状を変えるためには、法的な検討やパブリック・プレッシャー(世論の圧力)が必要です。ウィキペディアに関しては、寄付者や利用者が問題意識を高め、財団に改善を求めることが問題解決の第一歩です。
この内容を2021年2月3日に Interaction 21 という学会で発表します。参加者の反応などについては、後日ご報告します。
訂正:「南京事件」のページは厳密には「半保護」という状態になっていて、管理者に加えて「自動承認された利用者」が編集できるそうです。いずれにしても、編集するには「ウィキペディアに関するかなりの知識が必要」であり、これもその例のひとつだと思います。(1/17/2021)
(参考文献)
1. Reliability of Wikipedia. (2021, January 07). Retrieved January 16, 2021, from https://bit.ly/3isDSME
2. Rector, L. H. (2008). Comparison of Wikipedia and other encyclopedias for accuracy, breadth, and depth in historical articles. Reference Services Review, 36(1), 7-22. doi:10.1108/00907320810851998
3. Wikistats – Statistics For Wikimedia Projects. (n.d.). Retrieved January 9, 2021, from https://bit.ly/360WluD
4. Kelly, J. (2021, January 06). “Misinformation” vs. “Disinformation”: Get Informed On The Difference. Retrieved January 16, 2021, from https://bit.ly/3o30JzF
5. Japanese PM Slammed During US Visit on Comfort Women Issue. (n.d.). Retrieved January 12, 2021, from https://nbcnews.to/3p4MIm2
6. Japanese Wikipedia. (n.d.). Retrieved January 04, 2021, from https://bit.ly/2LJqCHE
7. 有志で取り組む「史上最大の百科事典」――Wikipedia日本語版の舞台裏 (n.d.). Retrieved January 04, 2021, from https://bit.ly/35YEzbD
8. Croatian Wikipedia. (n.d.). Retrieved January 04, 2021, from https://bit.ly/2XXLEEN
9. ウィキペディア日本語版. (2020, December 17). Retrieved January 16, 2021, from https://bit.ly/35WAYdU
10. Why victims of internet lies want Section 230 repealed. (n.d.). Retrieved January 08, 2021, from https://cbsn.ws/2XYUdiQ
11. Donors. (n.d.). Retrieved January 07, 2021, from https://bit.ly/3sK0ZHi
日本版ウィキペディアの管理者には知識人を装ったマフィアのようなテロリストが多く混じっているのは、実際にわたしも知っています。革命を起こす必要があります。彼らのような悪人をつぶす為には、国際的な大きな権力に手を借りる必要があると思っています。勇気ある活動を真面目に行っている方を尊敬しています。何かあれば助けますので、これからも頑張ってください。
佐藤さんの取り組みに賛同します。わたしは少額ですがWikipediaに寄付をしています。しかしそのお金が公正な情報作成に使用されていないとしたら残念です。寄付を止めるべきでしょうか。また、わたしは日本語版のWikiが不十分だと感じたときは英語版を見るようにしています。そして多くの場合その内容が日本語版で不十分なことに気が付いています。そこで、例えば南京虐殺について英語版の内容をそのまま日本語に翻訳して日本語版に掲載することは可能なのでしょうか?これも日本語版の編集者の許可が必要なのですか?
機械翻訳の文を使わず、かつどの版からの翻訳であるかを要約欄で示せば問題ないと思います。出展明示も忘れないでください。
コメントありがとうございました。少し時間がとれるようになったら翻訳にチャレンジしてみます。Wikipediaにはかなりお世話になっているので日本語版の正確性・信頼性を向上させたいです。
毎年少額を寄付しているだけでログインした事が無いレベルの者です。以前に修正合戦の事は聞いていましたが、詳細な内情に関してはは全く無知でしたので参考になります。改めて見てみたら、管理者への立候補や解任等に付いても明記されていて驚きました。これからは関心を持って見ていきたいと思います。
どんなサイトにもルールはあるとは言っても、Wikipediaのルールは特に複雑怪奇で、多くの人が参加するのが難しい仕組みになっていると思います。そのせいで一部の利用者による独占、嘘の蔓延が出てきている。そういった仕組みの部分をもう少し見直せば、大分ましになるのに、残念。
この日記に書かれていることに賛同します
実際に書き換えても消されることが多かったりノートページでも屁理屈(ルールをこねすぎること)をすることが多くて自浄作用が機能してないように思います
いつかこれが改善されることはあるのだろうか
慰安婦に関する記述の違いは、東南アジアでの植民地政策での記述でもご指摘のような問題があって、同様の問題意識を持っていました。他にも、朝鮮戦争の記述で、特に初期に米軍が北朝鮮に圧倒されている部分の記述が日本語版は英語版に比べてそれほど詳しくないとか、保守層が嫌う?ような内容の記述が少ない傾向があると思います。以前に、慰安婦は存在していた、と自分がコメントしたニュースサイトで発言がサイトの管理者(BLOGS)により削除されたりとか、ネットのメディアも保守よりのところが普通にあるので、wikiに限らないことだと思います。
解決策は、難しいですよね。。。翻訳技術がもっと進化して他国語版の参照が容易になれば〜というのは、時間がかかるけど、一つの解決策になるかと思います。
ただ、今回は、日本国内での限定条件で歴史修正が相当数いる、海外という多数の目にとまる場では、そういう歴史修正が修正される、という方向性になりましたが、例えば、最終的にそれを貫徹すると、少数の正論、というものがあった場合に(世界規模で考えて)、それが抹殺される可能性がでてくる問題があるのではないかとも思います。例えば、使用言語人数でいえば、中国語が一大勢力になりますから、他国語版との境界がなくなると、中国語圏的な理解の影響が大きくなりすぎるのでは? とも。
記事の編集者の多様性がある英語版で正確性が担保されている、という視点では、https://bookmeter.com/books/284417
「みんなの意見」は案外正しい
の本に似ているなと思いました。
ウィキペディアの日本語版にだけある特殊性について例を挙げて説明していただいてありがとうございます。初めて編集者のグループがあるということを知りました。創立者の理念に同意してこれまで参考にしてきました。記述に偏りがあるかもしれないことは承知していましたがはっきりと指摘されたことは衝撃でありまた非常に刺激的でもあります。ディベートの習慣が我々の社会に根付いていないことは別の場面で今痛感しています。このような問題を解決しようとする活動はとても大切で価値あることだと思います。是非続けてください。ウィキメディアへの寄付をしばらく停止しようとおもいます。
大変重要なご指摘だと思います。戦争分野に限らず、今の日本語版Wikipediaは特定の方向に世論誘導したい人にとって便利なプロパガンダ手段になってしまっていると感じます。
それとご存知かもしれませんが、過去の特定の日時(版)のページを引用したい場合はページ上部の「履歴表示」からその版のページに移り、ブラウザのURLバー、あるいはページ左側の「この版への固定リンク」、「このページを引用」などからURLが取得できるのでお試しください(デスクトップ版ページの場合)。
> 私が行ったすべての編集は、数時間後にすべてに元に戻されてしまいました
Wikipediaにはノートページというものがあります。その記事のノートページや投稿を取り消した人のノートページに取り消した理由を尋ねるのもありだったと思います。
さとうゆみこさん、戦争の歌が聞こえるを読みました。日本の戦争の加害の部分をとても細やかに書いていらしてとても勉強になりました。
ウィキはよく利用しますし、たまーに少額ですが寄付もしていました。佐藤さんの指摘に大変びっくりしました。
私も、日本語版wikipediaの慰安婦問題に関連する項目や、2015年日韓合意に関連する記述、日韓関係の歴史に関する記述などが、日本国内の保守系言論の「俗論」を強く反映しており、全く客観性にかけるため、いままで何度も修正を試みてきましたが、ほとんど即座にまた元に戻されてしまいます。最近は、もうあきらめの境地でほっといてます。別にナショナリズムや保守の立場でもそれは一つの考えとして良いのですが、事典の記述としては、もう少し客観性を心がけて記述してほしいものです。
自分はzh/enの編集者ですが、佐藤さんの意見にまったく同感です。「jaはwikimediaの本来の趣旨からかなり逸脱している」というのが、こちらのコミュニティのjaに対するイメージですね。
私も日本語版Wikipediaが、個人の嗜好に基づく恣意的な引用などで、きわめて偏向した内容になりうることを痛感する者のひとりです。英語文献からの引用ですと、意図的な歪曲があるかないかを判定できる人は少ないでしょう。
また、その項目に関わる当事者は執筆してはいけない、学術文書でないと引用してはいけない、といったガイドラインが過度に強調され、悪意を持った執筆者によって都合の良いように利用されうるのです。
Wikipediaは、そのガイドラインをゲームのルールのように熟知した者だけが、偏向を含んだ執筆者としての縄張りを確保できる、といったことが起こりうるシステムのように思えます。
おそらく、Wikipediaを自己満足のために、オンラインゲームのような遊び場にしている執筆者がいるのではないでしょうか。
ガイドラインを盾にとって、自分に都合の良い片寄った記述を守ろうとする傾向が見られるのです。新参者は煙に巻かれます。例えば、料理の項目で、料理学校の先生の記述より学者の記述が優先されるとしたらおかしいですよね。
Wikipedia、特に日本語版には多くの問題があります。看過できないと思っています。匿名性を排除すれば多少の改善はありえるでしょう。Wikipediaが抱える問題を一般の人に認知してもらえるよう、啓発がぜひとも必要です。
コメントありがとうございます。「Wikipediaは、そのガイドラインをゲームのルールのように熟知した者だけが、偏向を含んだ執筆者としての縄張りを確保できる」というのは実際に起こっている事だと思います。特定のページをモニタリングすることで、誰かが編集した場合にはすぐに通知を受けることができます。そして、その編集をすぐに元に戻すことができます。日本の戦争犯罪のページなどはそのような人たちがいるのでしょう。
私も、同様の批判的意見を、日本語版ウィキペディアに対して抱いてきました。
あなたの取組みに敬意を表します。
ありがとうございます!