FMシアター「ミュージックセラピスト」
『ラスト・ソング 人生の最期に聴く音楽』(ポプラ社)を原作とした、NHKオーディオドラマが放送されます。題名は『ミュージックセラピスト』。ドラマには、本で書いていない患者さんとのストーリーや、私の子ども時代の話なども出てきます。本を読んでくださった方も、そうでない方も楽しめる内容になっています。
この作品を手がけるのは、「中学生日記」などを演出されたベテランの演出家、佐々木正之さん。脚本は、「全力離婚相談」などで有名な、井出真理さんです。『ミュージックセラピスト』の中で、私(ユミ)役は女優の藤本喜久子さんが演じますが、歌の部分は私が担当します。
まだ日本では聞き慣れない、「音楽療法士」。この仕事が一人前にこなせるようになるまで、何年もかかりました。今こうして皆さんと音楽療法について語れるのは、恩師や患者さんたちから多くのことを学んだからです。私と患者さんとのストーリーを通じて、多くの人に音楽療法士の存在を知っていただければと思います。
NHKオーディオドラマ『ミュージックセラピスト』の収録のため、NHK放送センターに行ってきました。収録日の朝スタジオで、ドラマの中で使われる歌を7曲ほどギターやピアノの伴奏で唄いました。その後、役者さんたちの収録に立ち会わせていただきました。
オーディオドラマの出演者の数は大抵8、9人だそうなのですが、このドラマの場合子役も含めて20人。なぜそんなに出演者が多いのかというと、『ミュージックセラピスト』には『ラスト・ソング』で書いた患者さんやご家族の他にも、私の家族や大学時代の恩師などが描かれているからです。
登場人物の多くは、すでに亡くなった人たち。役者さんたちの演技を聞きながら、彼らのことを思い出しました。そしてまるで、彼らに一時でも魂が宿ったかのような不思議な気持ちになりました。
音楽療法とは、私たちセラピストと患者さんとの関係の中で生まれるものです。どのような関係においても、人間関係とは “two-way street”(相互的関係)であり、”one-way street”(一方通行)ではありません。ですから音楽療法士は患者さんから学び、成長してゆくのです。このドラマを通じて、私が彼らから教わったことを皆さんに伝えることができればと思います。*収録の日の写真はこちらにUPしました。
追加:
NHKオーディオドラマ『ミュージックセラピスト』が文化庁芸術祭に参加することになりました!芸術祭参加作品一覧(ラジオ部門ドラマの部)はこちらでご覧になれます。『ミュージックセラピスト』が今年の5月に放送された後、多くの方からコメントをいただきました。その中のいくつかをご紹介します。
短編映画を観てるような気がしました。
音楽の力、人間の生き抜く力、そして戦争の残酷さ。
深いテーマが凝縮されていましたが、「希望」の光を凄く感じました。(30代、男性)
昨晩のラジオドラマ、音楽療法について初めて知り、感動しました。今までエレクトーンの先生から音楽療法士になることを勧められる意味で、何度も名前は聞いていましたが、ずっとピンときていませんでしたし、どういったことをするかも全く知りませんでした。ラジオドラマを聞き、音楽と癒しが融合されたものがあると知って、うれしくて泣きました。そしてエレクトーンの先生がなぜ勧めていたかも、よくわかりました。
(30代、女性)
患者さんから教えられる、与えられる、それがケアの基本ですね。
(緩和ケアの医師)
事前に原作を読んでいたので、ストーリーがスーッと頭に入りました。患者さんであると共に、人生の大先輩でもあり、学ばせていただく事は本当にたくさんありますよね。そのサインを見落とさないよう、自分自身の心の在り方も注意したいと思います。
(デイサービスにお勤めの男性)
師田 栄一 says
偶然の出会いでした。ラジオを聴きながらうとうとしていた時、目覚めよという声がしたのです。揺り起こされました。なんと心にしみる言葉の数々でしょう。有難うございました。
Yumi says
師田さん、メッセージありがとうございました。偶然の出会いだったのですね。ラジオドラマをお聴きいただき、ありがとうございました。
水谷昇一 says
文化庁芸術祭参加です!今度の再放送は!
10月に再放送されるオーディオドラマ番組のうち、ミュージックセラピストを含む3作品は文化庁芸術祭参加作品です。10月3日の番組もなかなか秀作でした。
でも、ミュージックセラピストは最優秀賞を獲得できそうな気がします。
10月17日土曜日夜9時からです。
Yumi says
ありがとうございます!芸術祭参加、とても嬉しいです。
水谷昇一 says
再放送決まりましたか。すごいことです。最近は毎週のようにオーディオドラマを
聴いていますが、ミュージックセラピストの水準を超える内容のものはまずありません。
演出・脚本など当代一流のスタッフ、出演者の熱演、そして感動的な原作本と佐藤由美子さんの慈愛あふれる歌声が見事です。
賞は狙ってとれるものではありませんが、年間最優秀賞などがとれる気がします。
Yumi says
水谷さん、心あたたまるお言葉ありがとうございます。素敵な作品にしていただき、スタッフや役者の皆さんに心から感謝しています。
SHUN says
初めまして。
私は選曲という仕事を通して感情や情報を伝える仕事をしています。また昭和歌謡を専門に演奏する仲間と、バンド活動を行っています。
ラスト・ソング♪この本との出会が私自身に大きな影響と感銘を与へ、4月から音楽活動と並行し大学で健康福祉と臨床心理の勉強をスタートしました。それは自分がこの世から旅立つ時、最後にして最高の送り物、それが音楽であろうと強く感じたからでした。そして人々に旅立ちの時を少しでも穏やか気持ちで迎えてもらえたら・・そんな強い想いから音楽療法の探求を目指し経験や学びを積んでいければ・・と思っております。
Yumi says
はじめまして。メッセージありがとうございました。『ラスト・ソング』がきっかけで、新しいスタートをされたと聞き、とても光栄です。健康福祉と心理のお勉強、大変かと思いますが、頑張ってください。音楽活動もなされているのですね。今後のご活動、楽しみにしております。ぜひまたご連絡ください。今後ともよろしくお願いいたします。
保倉さん says
初めまして。
日々、選曲と言う仕事を通じて音楽で感情や情報を伝える仕事をしています。また昭和歌謡を伝承する目的で結成されたバンドでベースを弾いています。
毎日接している音楽ですが、『ラスト・ソング』を読ませていただき人生の最後に聴く音楽・・そこには死期を悟った人々の言葉では表現し尽くす事が出来ない想いが込められていることを教えていただきました。
私はこの本をきっかけにベースとなる福祉と臨床心理の勉強を4月から大学でスタートしました。今後、自分に何が出来るかは未知数ですが、音楽の持つ可能性を信じ音楽療法士の道を探求していきたいと思っております。
hosi says
我が国では多くの人たちはホスピスそのものを知りませんし、治療を放棄して死にゆく場所くらいの見方しかされていません。 残念ながら医療従事者にもそのような考えが大勢かもしれません。
佐藤さんが音楽療法のモデルとしてNHKで放映されれば、多少はホスピスへの偏見が
ただされるかもしれませんね。 番組を楽しみにしております。
心から応援します。 ただ心配なのは有名になれば不当な誹謗・中傷がおこる可能性が
あることです。 特に日本は嫉妬心からの足の引っ張り合いがありますので。
先日角川文庫から発刊されている中沢新一著の3万年の死の教え・チベット死者の書の
世界を読みました。西洋合理主義とは正反対の価値観ですね。今年の夏は恐山に行く
予定です。今までは精神世界にはほとんど関心がありませんでしたが。
今後も健康に留意されて無理ない範囲でご活躍ください。
Yumi says
星さん、コメントありがとうございます。いつも私の活動を応援していただき、ありがとうございます。チベット人の「死」に対する考え方は、大変興味深いですね。私は「チベット生と死の書 」という本をたまたま読んだことがきっかけで、ホスピス音楽療法士の道に進みました。ホスピスでのお仕事が、星さんにとって有意義なものとなることを願っています。