若い音楽療法士さんから『戦争の歌がきこえる』の感想をいただきました。その中にセラピストとして大切な事柄が書かれていましたので、一部を紹介したいと思います。
アメリカの方はWWIIをJust War(正しい戦争)であったと感じている人が多いのではないかという偏見を、私自身が持っていました。しかしその考えは、その時代を生きてきた人にも人格があり、 それぞれの生活があり、大切な人がいて、 大事にしていきたいものがあるのだということを無視するというこ となのではないかと思います。 いつの時代であっても人はそれぞれ違うのだということを、 歴史という大きな波の中の一つの出来事だけで見て見失っていたと 思います。日本人として、日本人の話を聞くことも大切だと思います。しかし、この本を通じて、その向こう側にいた方々について知ることができました。
物事はひとつの側面だけ見ていてはわからない。これは音楽療法士としてクライエント関わる中で、とても大切なことだと思います。戦争に限らず、全ての事柄においてです。
例えば、クライエントが家族関係で困っているとします。子どもと疎遠になっていて、その理由を話してくれたとします。その時、エンパシー(共感)を持って話を聞きますが、忘れてはいけないのは、私はあくまでもクライエントの視点しかわからないということです。相手側(この場合はクライエントの子ども)の言い分を聞いていませんので、全体の内容は把握できていないのです。それを念頭に置かないと、客観的な視点で物事が見れませんので、誰かをジャッジ(判断)したり、偏った結論にたどり着いてしまう可能性があります。
英語ではよく “There are two sides to every story(すべてのストーリーには二つの側面がある)”と言います。一方の話を聞くだけでは、その話の全体像や実際の状況が掴めないので、話の真相はわからない、という意味です。
「世界大戦」という大きな出来事を語るときにも、当然ながら様々な側面があります。私もそのことをアメリカ人の患者さんやご家族との関わりを通じて学びました。
すべてのストーリーには二つの側面があることを知る。それは、私たちが良い聞き手やセラピストになるために大切なことだと思います。
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