このパンデミックは世界大戦のようなものだ。でも今回は、私たち全員が同じ側にいる。
これは、ビル・ゲイツが自身のブログ記事に寄せた言葉。でも、この危機感がすべての人に伝わっていないと思う。私が住むアメリカでも”Social Distancing(2メートル以上離れること)”や “Stay Home(家にいること)”を真剣に受け止めていない人がいるが、日本でも同じようにのんびりしている人が多いのではないか。
今朝、BBCの”Global News Podcast“で、聖マリアンナ医科大学の藤谷茂樹医師が「医療崩壊」寸前の状況を必死に伝えていた。新型コロナウイルスで入院中の患者の多くは40代・50代が多いので「若い人は大丈夫と誤解しないで欲しい」と。流暢な英語で話していたが、彼の声から切羽詰まった状況が伝わってきて、本当に大変なことになっているのだと思った。
BBCは、「東京にはまだ人が多く、藤谷医師の声が届いていないようだ」と指摘した。そして、神戸大学病院感染症内科の岩田健太郎医師もインタビューに答え、「マスクをすることが解決策だと思っている人がいるが、それは違う」と語り、〈ステイホーム〉と〈2メートルの距離を取る〉重要性を訴えた。
(この点については、「『効果がない』『間違ったメッセージ送る』布マスク2枚配布、専門家はどう評価したのか」に詳しい。)
藤谷医師や岩田医師の言葉は、どれだけ日本政府や国民に届いているのだろうか? 放送を聞いてふと思った。彼らが本当にこのメッセージを伝えたい相手は、BBCニュースを聞いている海外のリスナーではないはず。国内の人たちにこそ伝えたいはずだ。
日本のメディアからは、正直あまり危機感が伝わってこない。情報も足りないと感じる。新型コロナウイルスについてはわからないことが多いが、各国では様々な研究が行われていて、臨床経験からわかってきたことも多い。そういう科学的エビデンスに基づくことをもっと報道して欲しい。危機状態にあるとき、何よりも大事なことは正しい情報を伝えること、つまり “transparency”(透明性)だと言われる。
こういう状況を察したのか、ノーベル生理学・医学賞受賞者の山中伸弥教授が「山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信」というHPを立ち上げた。重要な情報が簡潔にわかりやすく提供されている。
ビル・ゲーツの言うように、今の状態が「世界大戦」だとしたら、それを闘っているのは医療・介護従事者たち。だからこそ、彼らの声をもっと国民に届けて欲しい。彼らが今、私たちに伝えたいことは、“Stay home. Save lives(命を守るために、家にいて)”ということだと思う。私たちは自分のためだけではなく、最前線で闘っている医療・介護従事者のためにも感染者を増やさないようにしなければいけない。
ワシントン州知事のインズリー知事は、州民に向けてこう言った。
車のダッシュボードに看護師の写真を置くといい。そして、出かける前に自問して欲しい。この外出は、本当に必要なのか、と。
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