今年、芸能人の自殺が相次ぎました。その中のひとりの自殺後、「涙が止まらない」という方からメッセージが届きました。芸能人の自殺の報道が一般人に与える影響は、度々話題になります。
The BMJ (ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル)に掲載された研究結果によれば、メディアが有名人の自殺を報道した後、一般人の自殺のリスクが13%増加したそうです。また、有名人の自殺方法が報道された場合、同じ方法による自殺が30%増加しました。
このような理由から、芸能人の自殺の報道は慎重に行う必要があります。この点については、BuzzFeedの記事「『報道が死ななくても済んだ人を殺している』相次ぐ芸能人の自殺、精神科医が過熱する報道に苦言」をご覧ください。
いずれにしても、芸能人の自殺後、その人のファンだったかどうかに関わらず、精神的に影響を受けてしまうことがあるのだと思います。私にメッセージを送ってくれた方は、複雑なグリーフを経験していると感じているそうです(※グリーフとは、大切な人を失ったときに起こる身体上・精神上の変化を指します)。
確かに、大切な人の自殺は複雑なグリーフにつながる場合がありますが、本人の精神状態も要因として考えられます。精神的にバランスがとれていなかったり、過去に複雑なグリーフを経験したことがある人は、喪失に対応できないかもしれません。喪失がきっかけで、別の問題(例:解決していないグリーフ、トラウマなど)が浮上する可能性があるのです。
そのような時は一人で悩まず、信頼できる人にお話しください。専門家に助けを求めることも大切です。
先日の記事「心の回復のメカニズムとは?」では、心の痛みや苦しみを乗り越えていくためには「情熱の炎を通り過ぎなければいけない」というユングの言葉を紹介しました。でも、当然ながらこの過程をひとりで経験するのはとても大変なことです。だからこそ、心のケアを専門とするプロフェッショナルが存在します。助けを求めるのは勇気がいることですが、カウンセラー、臨床心理士、精神科医などに相談することをおすすめします。
もし、あなたが自殺を考えている場合は、いのちの電話(0120-783-556)やその他のいのちを支える相談窓口へご連絡ください。
もし、周りに自殺をほのめかしている人がいる場合は、東京都福祉保健局のサイトにある「死にたいと打ち明けられた時の対応」が参考になると思います。
最後に、多くの国で自殺が増えています。コロナの影響で、ストレス、不安、孤独感、無力感などが高まり、自殺につながる可能性があります。
あれちょっといつもと違うな、塞ぎ込んでいるなと思うなら声をかけてほしい。『別に』『大丈夫』と答えが返ってくるかもしれないけど、『煩わしいかもしれないけど、もしよかったら話してね』と伝えてほしい。
自殺を考えているんじゃないかと思うなら、『死ぬこととか考えてる?』って率直に聞くことも1つの方法です。死ぬことを考えているのかと尋ねることが自殺の呼び水になることはありません。むしろ、この人の前では自分の悩みを隠さなくても大丈夫だという安心感へとつながるんです。
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