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音楽療法日記|グリーフサポートと終末期ケア|佐藤由美子

グリーフサポートと音楽療法|人生の最期に聴く音楽

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Home » 音楽療法について » 終末期ケアの音楽療法 » 音楽療法士が患者に信頼されるために – 成長と自己発見

音楽療法士が患者に信頼されるために – 成長と自己発見

先日、松山で一般向けと愛媛大学医学部の学生および医療従事者向けに2つの講義を行いました。その際、いくつかの興味深い質問が寄せられました。これらの質問は以前にも他の方から寄せられたものなので、以下でそれらに対する回答をシェアします。

音楽療法士として、一番大切にしていることは何ですか?

音楽療法の学生だった頃、「自分のワークをしなさい」と恩師の Jim Borling 教授によく言われました。良いセラピストになるためには、まず自分自身と向き合わなければいけない、と。心理学者のカール・ユングも同じような事を言っていて、セラピスト自身の傷が治癒力の尺度となると強調しています。

もちろん、これは言うほど簡単ではありません。自分の短所やつらい過去、複雑な人間関係等、誰もが避けたい事柄にあえて向き合うのは大変なことです。振り返ってみると、学生時代「自分のワーク」をすることは、楽器の演奏や音楽療法の技術的な側面を習得することもずっと難しい事でした。セラピストになってからも、自分の内面の問題に向き合うよりも、クライエントの回復や成長をサポートすることに焦点を当てる方が楽だと感じました。

セラピーにおけるクライエントとの関係性

でも、自分の心の痛みを理解せずには、クライエントと良い関係を築くことはできません。ホスピスでインターンシップをしていた際、スーパーバイザーは音楽療法士にとって最も重要なのは音楽の腕前やセラピューティックなスキルではなく、私たち自身であると強調しました。「楽器の演奏や歌がどれほど上手でも、患者に信頼される存在でなければ、良いセラピストにはなれない」と彼は言ったのです。

「自分のワークをしなさい」というアドバイスは音楽療法士に特有のものではなく、医療介護のさまざまな職種に言えることだと思います。専門知識に関係なく、患者さんとの信頼関係を築くことは効果的なケアを提供する上で不可欠です。そしてこれは、生涯にわたる終わりないプロセスなのだとつくづく感じます。

音楽療法が逆効果になる患者さんはいますか?

音楽療法はすべての患者に適しているわけではありません。どんな療法や治療法でも、特定の患者さんにはリスクが伴う可能性があります。ここではそのような事例を共有します。

以前、オハイオ州のホスピスで音楽療法士として働いていた際、マリーという患者さんに出会いました。彼女は70代後半で、ドイツからの移民でした。ホスピスのスタッフとうまく英語でコミュニケーションが取れないことから、ドイツの歌を使ってアプローチしてみるといいのではないか、と音楽療法を委託されたのです。私がブラームスの子守唄を唄うと、マリーは突然「ナチスが来る!」と叫び、恐怖に満ちた目で私の手首を強くつかみました。後に、彼女がホロコーストの生存者であることが判明しました。

バーバル・プロセシング (verbal processing)とは?

音楽はマリーのトラウマを呼び戻したのです。さらに、精神的および認知の衰退のために、マリーは「バーバル・プロセシング (verbal processing)」をすることができませんでした。音楽療法におけるバーバル・プロセシングとは、思考・感情・経験を口頭で表現し、話し合うことを指します。このようなコミュニケーションは、自分の思考に洞察を得たり、経験をより深く理解したり、トラウマを乗り越えたりすることに役立ちます。マリーの場合は、バーバル・プロセシングが難しかっただけでなく、過去と現在を区別することもできませんでした。

悲しいことに、マリーのようにトラウマを経験した人が最期の時にその記憶に苦しむことは珍しくありません。私は『戦争の歌がきこえる』で、マリーを含む第二次世界大戦の体験に悩まされる患者たちの話をまとめました。

一方で、『ラスト・ソング』では、沖縄戦を生き抜いた時子さんという女性が痛ましい過去と向き合い、受け入れていくプロセスを紹介しました。マリーとは異なり、時子さんはセッション中に言葉を使って自分の感情、思考、そして経験を表現し、探究することができたのです。数か月で彼女の状態は改善し、最終的にはホスピスの対象外となりました。

時子さんとマリーの違いは、二人の精神的・認知的状態、特にバーバル・プロセシング能力の有無です。他のホスピスの患者さんの場合は、単に音楽を使ったカウンセリングをするエネルギーや時間が不足している可能性があります。音楽は思い出や感情を呼び覚ますことがありますので、音楽療法士には、患者さんの反応にどう対処し、音楽療法が適切かどうかを評価する能力が求められます。

多くの死に逝く人と接したことで、自分の「死」に対する考えは変わりましたか?

私がホスピスで働きたいと思った一番の理由は、死が人生で最も恐ろしいものだと思ったからです。当初、私は24歳だったので、自分の死というより、大切な人の死について考えていました。ホスピスで働き始めてからも、大抵の患者さんは年配の方々だったので、自分のモタリティ(死すべき運命)について真剣に考えたことはなかったと思います。でも、26歳のある日、同年齢の患者さんに出会ったことで全てが変わりました。

その患者さんをここではマークと呼びます。彼は2人目の赤ちゃんを迎えたばかりで、長女はまだ幼児でした。ホスピスに入るわずか1か月前に、末期の骨ガンと診断され、残りの時間は長くない状態でした。マークはまだ終末期の宣告にショックを受けていたに違いありませんが、同時に彼は運命を受け入れたようにも見えました。彼が私に唯一頼んできたことは、彼の子どもたちのためにセッションをしてほしいということでした。今でも、セッション中、マークがシェイカーを振る娘の様子をじっと見つめていた光景が忘れられません。

自分の死すべき運命と向き合うこと

私はマークとの出会いで、誰もが必ず死を迎えるという現実を自分のことととして見ることを強いられました。ただ、死がいつ起こるかは誰にもわからない。先の事かもしれないし、マークのように予想よりもはるかに早く起こるかもしれない。そして、それに関して自分は何もできない。確かなのは、今この瞬間だけ。

マークは私にモタリティ(死すべき運命)と向き合わせてくれたのです。この気づきによって、私は毎日を十分に生きることを心がけるようになりました。ホスピスの仕事を通して、死への恐怖は減りましたが、完全になくなったわけではありません。むしろ、死を直視することによって、生きることに焦点を当てるように変わりました。死を恐れて生きたくないですし、それによって今この瞬間を見逃したくないのです。つまり、ホスピスの仕事を通じて学んだのは、大切なことは限られた時間をどのように生きるかだということです。

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コメント

  1. 関 says

    at

    こんにちは。今年(2024年)の3月に父を、4月に母を見送り、今まだメソメソぐずぐずの状態です。きっかけは忘れてしまいましたが、佐藤さんの「死に逝く人は何を想うのか」の本に巡り合いました。泣きながら何度も呼んでいます。私が母に対してやってあげられたことは間違っていなかったと確認できた本でした。
    本当に救われました、感謝の気持ちでいっぱいです。
    また第3章の「グリーフについて」の内容が、とても心に響きます。本当に悲しい体験をした者の気持ちを汲み取っていただいている内容です。今、私を食事に誘ってくださる方に僭越な形になりますが、先に読んでくださいとコピーをお渡ししています。
    佐藤さんの講演、機会がありましたら拝聴したいです。

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    返信
    • Sato Yumiko says

      at

      関さん、メッセージありがとうございます。本がお役に立って嬉しいです。グリーフはとても疲れる過程ですので、くれぐれもご自愛ください。

      読み込み中…
      返信
  2. 村井香里 says

    at

    初めまして。
    40代、大阪でピアノ教室を主催しております。
    去年の9月に母が他界しました。最期は10日間ホスピスでお世話になり、最期は鎮静を希望し、逝きました。亡くなる4日ほど前まではホスピスで大好きな音楽を聴いていましたが、倦怠感と痛みが増し、音楽を止めてほしいといいました。その次の日に、もう反応ができなくなる鎮静を希望しました。倦怠感と痛みから解放され、険しい表情は和らぎましたが、3日後に息を引き取りました。聴覚は残っていることは知っていましたが、音楽を聴かせるという心の余裕が私にはありませんでした。音楽を聴きたかったでしょうか。気持ちがより穏やかになったのでしょうか。

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    返信
    • Sato Yumiko says

      at

      とても興味深いご質問、ありがとうございます。聴覚は最期まで残る感覚であるだけではなく、人は最期に近づくにつれて聴覚の感度が高まる傾向があります。そのため、患者さんの中にはテレビの音や音楽、声などに敏感に反応する人もいます。このような場合、部屋をできるだけ静かに保つことが重要です。終末期の患者さんの中には音楽で穏やかになる人もいますが、全員が音楽を望むわけではありません。元気な時に音楽が好きな人でも、病気の時は音楽の刺激に耐えられないことがあるのは珍しくありません。そのため、お母様の希望を尊重して音楽を流さなかったことは正しい判断だったと思います。

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      返信
      • 村井香里 says

        at

        なんだか
        心から救われました。
        本当にありがとうございました。

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        返信

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