『死に逝く人は何を想うのか』(ポプラ社)が発売になってから、たくさんの感想をいただいていますが、中でも多いのが医師からのメッセージです。
今日は、外科医の男性からの感想をご紹介します。
私は音楽が大好きで、バイオリンを弾いていたこともあります。音楽療法には興味があり、緩和ケア病棟のひな祭りでボランティアした経験もありました。
実は最初、『ラスト・ソング』を読んだとき、なんだか違和感を感じてたんです。音楽療法というツールは自分が思っていたイメージ(老人と楽しむ、認知症の方に対して、単に上手に感動する様に演奏する、がんの方には癒しの時間を…)と全く違っていたし、その持つ力と、使い方によっては人の心を揺さぶる最高のツールだと言うことで、激しく感動しました。
本格的なセラピーとして確立している米国は日本とずいぶん違うなとも思いました。ただ、うまく表現できないんですが、この本の舞台が米国であったことで、何となく「アメリカでの話なんだな…」とわけのわからない理由で、少し冷めた目で見たりもしてた自分もいました。
『死に逝く人は何を想うのか』を読み進んでいってるうちに、なんだか最初に自分が感じてた感想が間違ってる気がしてきて、途中で『ラスト・ソング』をもう一度読み返しました。
「輝く日」のおはなし、「千の風になって」のおはなし、「Rainbow」のおはなし。斜め読みしていたのがもったいないくらいのストーリーをもう一度読んで、感動しました。最初に気がつかなかった自分が恥ずかしくて。米国が、日本が、なんて思ってた自分がちっぽけで恥ずかしかった。
自分は「音楽は万国共通だ」と思っていたはずなのに…。
『死に逝く人は何を想うのか』では『ラスト・ソング』に比べてご自身の言葉をたくさん書かれてますね。この気持ちを引き出す言葉が「キモ」なんですね。コミュニケーションの勉強を少しづつしている自分にはすっと入ってきます。この本を読んでいると、セッションの光景がその香りまで心の中に浮かぶようです。
ライフレビュー、3つの言葉、グリーフについてなんかは、私が読んだいろんな緩和ケアの教科書より説得力が有り、わかりやすいです。特に3つのことば、「ありがとう」「ごめん」「許す」はすごく落ちてきます。
不思議なことにもう一度その思いで『ラスト・ソング』を読むと、しっかりと光景が心にうかびますね。
音楽の演奏は単なるツールで、いかにそれをうまく使って、心の声を聴き、逃げることなくまっすぐに向き合って正直に話をするか。
2冊とも、医学生やセラピスト、ケアギバーには素敵な教科書になると思います。
「音楽療法士にとって、音楽は道具箱の道具だ」と、インターン時代の教官がよく言っていました。そのツールをいかに使うかが難しく、やりがいのある点でもあります。
地域医療に取り組む医師のブログ、 「最期まで自分らしくあるために」でもご紹介いただきました。こちらの先生からも音楽の使い方について、似たようなコメントがありました。
「音楽療法といっても、ただ好きな音楽を聞いてもらえばいい、というわけではなかったようです。音楽はあくまでも、心を開いてもらうための道具のひとつに過ぎません」
おそらく多くの人には、「音楽療法」=「音楽が癒す」 というイメージがあるのでしょう。でも実は、音や音楽そのものが癒しをもたらすと考えるアプローチは、「サウンドヒーリング(サウンドセラピー)」の領域で、音楽療法とはまた別のアプローチです。
初めまして。
私は愛知県の維持期の重度認知症患者様が多く入られている病院で音楽療法士として働いています。
所属がリハビリということもあって認知機能の維持を目的にしたり、嚥下機能の向上につとめたりしていますがやはりこれといった目に見える効果が少なく、どうしても周りからレクリエーションの一環として捉えられてしまいます。
そうではなくアメリカのようにケアの1つとして捉えられるようになるにはどうしたら良いのでしょうか。何かアドバイスをいただけないでしょうか。
また死に逝く人は何を想うのか
という本を読まさせていただきました。感動するとともに音楽療法士として1つの目標として向かって行きたいと感じました。
日本ではなぜこんなにも音楽療法というのは地位が確立しにくいのでしょうか?
伊藤さん、はじめまして。ご質問ありがとうございます。日本で音楽療法が専門職として確立されていない理由は複雑で、原因はひとつではありません。ただ、いくつか大きな理由があるのも事実です。いずれこの件についても記事に書こうと思っています。ちなみに、病院での音楽療法のセッションは、グループで行われていますか?その場合、何名くらいのグループでしょうか?
返信ありがとうございます。Twitterでも取り上げてくださりありがとうございます。
基本個別で対応しており、集団は週に2回程度で3人の時もあれば20人近くになることもあります。
重度の認知症患者様ということもありみんなで楽器を鳴らしながら歌を歌おう、手拍子しながら、などはできず歌を歌ってその歌について話をしたりまた関連した話があれば話ができる人に話をしてもらう、といった形で認知機能の維持など目的として行っています。
なるほど。認知症の方20名となると、どうしても「レク」になってしまいますね。個別のセッションの後など、他のスタッフが読めるノートにセッションの内容を記入されていますか?スタッフの理解を得るために、Documentationは欠かせません。地道な努力ではありますが、見ている人は見ていると思います。ひとりでも多くのスタッフの協力を得ることを目標にしてみてください。