『戦争の歌がきこえる』が出版されてから、おじいさんが太平洋戦争で戦死した方や、何らかの理由で徴兵を免れたた方などからメッセージが届きます。ある女性のおじいさんは戦争で亡くなったため、一度も会うことができなかったそうです。またある方のおじいさんは、病気を持っていたので徴兵されず、生き延びることができたそうです。中には、当時大学生だったため、徴兵を免れたという話も聞きました。
昨日、おじいさんの従弟が戦争で亡くなった女性からメッセージが届きました。彼は戦地で病死したそうですが、その詳細を知る人はいません。大学で法律を勉強しようとしていた矢先の出征だったそうです。
彼女のメッセージには、おじいさんが亡くなるまで大切にしていたという従弟の写真が添付されていました。学生服を着た彼の後ろには、「祝」や「武運長久」(ぶうんちょうきゅう)などの言葉が書かれた旗や、沢山の旭日旗が見えます。でも、彼の表情にはまったく異なるストーリーが映し出されていました。黒縁眼鏡をかけた真面目そうな彼の顔には、悲しみや不安、夢を諦めるしかない無念な心が見えます。
彼のような数え切れないほどの若者が、先の戦争に夢も人生も奪い取られたのです。私の祖父は戦争を生き延びましたが、弟は硫黄島で戦死しました。大叔父について祖父から直接話を聞いたことはありませんが、彼のことは祖父の心の中にずっとあったのだと思います。
先日、アメリカの公民権運動家のジョン・ルイスが亡くなりました。彼はキング牧師と共に公民権運動で指導的な役割を果たし、その人生を人権確立のために捧げたことで知られています。お葬式の日に、彼の最後の言葉がニューヨークタイムズ紙に掲載されました。その中で彼は「歴史を勉強し、その教訓から学びなさい」と訴え、その理由についてこう述べています。
トゥルース(真実・事実・真理)は変わらない。だから過去に見出した答えから、現代の課題への解決法を見つけることができる。
「トゥルース (truth)」には様々な意味があるので、訳すのが難しい言葉ですが、ここで彼が意味している「トゥルース」とは、歴史から学ぶ「教訓」であり、普遍的な「道徳的真実(モラル・トゥルース)」のことだと思います。
歴史をしっかり学べば、過去の「教訓」を役立たせて今日の問題を解決することができます。逆にそれを行わなければ、過ちを繰り返す可能性があるのです。
第二次世界大戦の経験者の多くは、もうこの世にいません。だからこそ、歴史の教訓を学ぶことが今まで以上に重要なのだと思います。そのようなことを念頭に置いて、8月8日(土)に『終戦記念日を前に語りたい、僕たちが知らなかった戦争のこと』というオンラインイベントを開催します。年齢問わず、どなたでも参加できますので、ぜひお申込ください。
現在、85歳になる母親は、東京大空襲を足立区の梅島で体験しました。母は空襲で逃げまどう中、焼夷弾で立ったまま焼けただれる人を何人も見たと私が幼い時に話してくれました。その時の話が還暦を過ぎた私の中に今でも残っております。
高橋さま、コメントありがとうございます。お母さまは大変な経験をされましたね。東京大空襲は本来もっと語られるべき出来事だと思います。