
音楽療法とは何ですか?
音楽療法とは、対象者(クライエント)の身体的、感情的、認知的、精神的、社会的なニーズに対応するために、音楽を意図的に使用する療法です。音楽療法は確立された専門職で、トレーニングを積み、資格をもった音楽療法士によって行われます。
米国音楽療法学会(American Music Therapy Association)の定義には、このように示されています。
Music Therapy is the clinical and evidence-based use of music interventions to accomplish individualized goals within a therapeutic relationship by a credentialed professional who has completed an approved music therapy program. (American Music Therapy Association)
(訳) 音楽療法とは、臨床的かつエビデンスに基づいた音楽の使用法。 (セラピストとクライエントの)治療関係の中で、個人の目的を達成するために音楽を利用する。承認された大学を卒業し、資格をもった音楽療法士によって行われるものである。
現在、米国認定音楽療法士は7000人、日本音楽療法学会認定音楽療法は3000人ほどいます。
音楽療法士になるには?
音楽療法の資格は国によって異なります。米国認定音楽療法士(MT- BC)になるには、承認された大学の音楽療法のカリキュラムを終了し、6ヶ月間フルタイムでインターンシップを実行する必要があります。その後、試験を受験する資格が与えられます。日本音楽療法学会認定音楽療法士になる方法は、日本音楽療法学会のページの「認定資格の取得について」をご覧下さい。
音楽療法士になるには、楽器を弾けないといけませんか?
米国認定音楽療法士になるには、ピアノとギターが弾けないといけません。歌が唄えることも条件のひとつです。音楽療法士はクライアントのニーズ応じて、ピアノやギター以外の楽器も使います。
音楽療法士はどこで働くのですか?
音楽療法士は様々な場所で仕事をします。 例としては、精神病院、リハビリ施設、医療病院、外来診療、デイケア治療センター、発達障害者にサービスを提供する機関、薬物やアルコール依存症治療のプログラム、刑務所、高齢者センター、老人ホーム、ホスピス、学校などです。
音楽療法の歴史とは何ですか?
音楽が人間の癒しにつながるという考えは大昔からあり、古代エジプトまでさかのぼることができます。今日的な意味での音楽療法が行なわれるようになったのは第二次世界大戦中の欧米です。
その当時、戦争によって身体的および感情的なトラウマに苦しんでいた軍人のため、音楽家が軍人病院に行って音楽を弾きました。医療の現場で働いていた人々や音楽家は、音楽の力に気づいたと同時に、音楽療法を行うにはトレーニングが必要だと実感しました。それが大学での音楽療法学科設立のきっかけとなったのです。
誰が音楽療法の対象となりますか?
音楽療法はどんな人にも役立ちます。精神疾患、発達障害、認知症、薬物依存症、身体障害、脳損傷、新生児、慢性疼痛、末期の患者さんなど、さまざまなな人が対象となります。たとえ健康な大人でも、音楽療法のベネフィット(恩恵)を受けることができます。音楽療法士は出生前から終末期を含めた、人生すべての段階で人々をサポートします。
音楽療法のセッションというのは、どういったものですか?
音楽療法のセッションの内容は、クライアントによって違ってきます。例えば、自閉症児との音楽療法とホスピスの患者さんとの音楽療法では、全く違った内容になります。ただし目指す原理は同じです。音楽療法士はクライアントのニーズに基づいて、意図的に音楽を使用します。
私が専門としているホスピスや緩和ケアの領域では、音楽を聴く、一緒に唄う、楽器をつかった即興、曲作り、歌詞のディスカッション、音楽回想法などの介入方法があります。
音楽療法のどのような部分が誤解されていますか?
音楽療法を受けるのに、音楽の素質は必要ではありまん。また、ある特定の音楽がセラピーに良いということもありません。音楽療法で使用する音楽は、クライエントの好み、ニーズ、状況などによって異なります。
音楽療法とはセラピスト(音楽療法士)とクライエント(対象者)の関係性の中で音楽を使うアプローチですので、個人でCDを聞くことは音楽療法ではありません。また、ある一定の周波数を流すことは、音楽療法ではなく、サウンドヒーリング(サウンドセラピー)と呼ばれる領域です。
近年、認知症の人とiPodを通じて音楽を共有するアプローチが注目されていますが、これは”Music & Memory” というもので、音楽療法(Music Therapy)とは異なるアプローチです。
音楽療法と音楽レクの違いは何ですか?
音楽療法(music therapy)とは、「治療目的」に焦点をおいたアプローチです。音楽レク(recreational music making)は、「楽しむこと」が焦点となります。詳しくは、「研究結果からみる『音楽療法』と『音楽レク』の違いとは?」を参照ください。
終末期ケアに音楽療法が取り入れられはじめている理由は何ですか?
私がアメリカのホスピスで活動を始めた2002年、アメリカでも音楽療法を取り入れているホスピスは珍しかったのですが、現在では多くの音楽療法士が終末期ケア(エンド・オブ・ライフ・ケア)に携わっています。国内でも緩和ケア病棟、ホスピス、在宅医療などの現場で音楽療法を取り入れる所が増えてきています。
終末期ケアに音楽療法が取り入れられはじめている理由のひとつは、研究結果によって音楽療法のさまざまな効果がわかってきたことにあります。音楽療法によるうつ状態の軽減やQOL(生活の質)の向上などが確認されています。また、医療の焦点が「症状の治療」から「全人的なケア(ホリスティックケア)」に変化しているのも音楽療法が注目されている大きな理由のひとつです。
音楽療法は、ホスピスや緩和ケアにおいてどのように使用されていますか?
ホスピスや緩和ケアで働く音楽療法士は、音楽を使って患者さんの精神的なサポートをし、不安やストレス軽減します。音楽療法によって痛みの緩和をすることも可能です。また、患者さんとご家族が有意義な時間を過ごすお手伝いもします。
ホスピスや緩和ケアにおける音楽療法に関しては、『ラスト・ソング 人生の最期に聴く音楽』(ポプラ社)を参照ください。
関連記事
